虚実を尽くす ページ20
私が向かった先は始まりの場所。私が最初に発見され最後に穴が出現した場所だ。そこは幹部専用の喫煙所。何の偶然か喫煙所には、よれたスーツ姿の彼の姿があった。
「大先生」
私が声をかけるとその人物はゆっくりと振り返り、ラピスラズリの瞳に私を捉えると「待ってたよ」と口を動かす。何だか試されていたようで心地が悪い。
「こんなところに一体何の用かな?」
「大先生に話したいことがあるんです」
「そっかぁ。天使様の話ならきちんと聞かないとなぁ」
喫煙所には簡易ベンチが置かれていた。匂いが大丈夫ならここに座ってと大先生に言われ、ベンチに腰かける。
「話って何か聞いてもええ?」
いつも優しくしてくれた大先生が相手なのに知らない人のように感じてしまい緊張する。そんな私を見兼ねた大先生から話を振ってくれた。
「そない緊張するってことはまさか…告白?」
「ち、違います!」
「そんな否定されると辛いわぁ」
カラカラと笑う大先生のおかげでいくらか緊張は和らぐ。私は意を決して彼に疑問をぶつけた。
「…私をこの世界へ連れてきたのは大先生ですか?」
自分の声は思ってた以上に弱々しく震えてしまっていた。
「それはマンちゃんから?」
「違います。私が自分で真実を聞きにきたんです。」
「ふーん。でも俺は関係ないよ。第一発見者やから疑うんも分かるけどなぁ」
大先生は煙に巻かれたかのように質問から逃れる。しかしその態度にどこか違和感を感じた。ここを逃したら永遠に彼の本心には近づけないだろう。…私は彼の手を取った。
「ただ、理由が知りたいだけなんです。」
「嘘なんかついてないで」
「分かりますよ。大先生、私には嘘つかなくて大丈夫ですよ」
大先生の目が変わる。
そして観念したように大きく溜息をした。
「ほんま…敵わんなぁ…。君にだけ、特別に真実を教えたる。後悔はせん?」
「はい。私は本当のことが知りたいです。」
「ならまずは俺の異能からやな」
彼は私の手をそっと外して空を仰ぐ。
「
「…どういう意味ですか?」
「僕の嘘は真実となるんよ。だから本当はグルちゃんの異能にも対抗できるんや」
「総統も大先生の能力は知らないってことですか?」
「せやで。グルちゃんも、トントンもマンちゃんも…誰も知らん。」
ははは、と乾いた大先生の笑い声。私は大先生が言葉を続けるのを静かに待った。
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鳩山(プロフ) - えみさん» コメントありがとうございます。懸命に生きる2人と彼らの話を素敵と言っていただき本当に光栄です…!最後までご愛読ありがとうございました! (2021年2月20日 16時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
えみ - rbr推しですがshaちゃんとくっついて欲しいと思ってしまう程の作者様の文才に引き込まれました…!とても素敵な話でした! (2021年2月19日 17時) (レス) id: 1597543406 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ブンブンさん» ブンブンさん!以前もコメントして下さいましたよね?本当ありがとうございます…!良かったら番外編でもよろしくお願いします…!最高に嬉しい言葉を本当にありがとうございました! (2019年11月11日 0時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ブンブン(プロフ) - 完結おめでとうございます!貴方の作品に出会えて本当に良かったです! (2019年11月10日 23時) (レス) id: 4a511d68cf (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - kogarashi343gooさん» コメントありがとうございます!本当に嬉しいお言葉ばかりで私からも感謝させてください!すごく励みになります…!今後は番外編然り、別作品然り、更新頑張っていくつもりですので今後ともよろしくお願い致します! (2019年11月10日 22時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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