疼く傷痕 ページ2
『こちら館内放送。こちら館内放送。館内にいる幹部は至急、幹部棟5階会議室へ。繰り返す…』
時刻は丑三つ時を過ぎた頃。大音量の放送により飛び起きた。何だ夢か…ともう一度眠りにつこうと横になると天井にぶら下がっている人物と目が合い時が止まる。人間本当の恐怖を味わった時声が出ないらしい。
「チッス」
そして数秒遅れて私は悲鳴をあげた。
「クックックッ…ほんまいい反応するなぁ自分」
「ゾムさん深夜にそうやって出てくるのやめてもらえますか…?心臓がいくつあっても足りそうにないので…」
「Aが幹部になって初めての緊急会議やし迎えに行ったろと思った先輩の気遣いやで」
「そんな気遣いいらないです」
どうやら放送で呼ばれた私を迎えに来てくれたらしいゾムさんだが迷惑極まりないやり方に溜息を落とす。ゾムさんは私の反応がよっぽど気に入ったのか未だに腹を抱えて笑っている。失礼な人だ。
会議室に入ると夜番だった大先生とチーノだけ身なりは整っており、他の寝起きの幹部達が目に入った。私とゾムさんが入室したのを見て総統が揃ったなと声を発する。
「幹部を集めたのは他でもない。以前トンつく隊に居た裏切り者の件だ。」
トンつく隊にいた、裏切り者。未だ治らない傷に無意識に触れた。あの人の声が、暴力が、フラッシュバックし私は一度目を閉じて深呼吸をして落ち着かせる。
「ゾムとコネシマが始末したのは、あいつではない影武者であったことが分かった。お前達殺したのはこの顔だったか?」
「わざわざ殺した奴の顔なんか覚えてへんわ」
「俺も忘れたな」
「では殺したという確証はないな。そして鬱。例のものをこちらへ」
「はいよ〜。じゃあ皆じっくり聞いたってな」
そうして大先生が取り出したのは一つのボイスレコーダーであった。
『…化け物の皆さん今晩は。そしてトントン隊長、チーノ副隊長。私のことは覚えていますでしょうか?
ろくにご挨拶も出来ずに軍を去ってしまって申し訳ないです。でも手土産は気に入ってもらえましたか?さすが戦争国家の我國の隊員。一般兵でも骨が折れましたよ。
無駄話はよして本題に入りましょうか。
……グルッペン・フューラー。貴方は我國を創立させた時言いましたね。「差別のない、自由な国家」と。そうして他国の自由を戦争で奪った。私は貴方を許しません。私は貴方の大好きな戦争で貴方の国を壊してみせます。化け物がトップの国だなんて許せない。』
その声には明確な怒りが感じ取れた。
737人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鳩山(プロフ) - えみさん» コメントありがとうございます。懸命に生きる2人と彼らの話を素敵と言っていただき本当に光栄です…!最後までご愛読ありがとうございました! (2021年2月20日 16時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
えみ - rbr推しですがshaちゃんとくっついて欲しいと思ってしまう程の作者様の文才に引き込まれました…!とても素敵な話でした! (2021年2月19日 17時) (レス) id: 1597543406 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ブンブンさん» ブンブンさん!以前もコメントして下さいましたよね?本当ありがとうございます…!良かったら番外編でもよろしくお願いします…!最高に嬉しい言葉を本当にありがとうございました! (2019年11月11日 0時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ブンブン(プロフ) - 完結おめでとうございます!貴方の作品に出会えて本当に良かったです! (2019年11月10日 23時) (レス) id: 4a511d68cf (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - kogarashi343gooさん» コメントありがとうございます!本当に嬉しいお言葉ばかりで私からも感謝させてください!すごく励みになります…!今後は番外編然り、別作品然り、更新頑張っていくつもりですので今後ともよろしくお願い致します! (2019年11月10日 22時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ