迷える子羊 ページ18
「オスマンさん!?」
「Aが暇やったら廊下で突っ立っとかんとお茶でもどうや?」
「私でいいんですか…?」
「勿論!いい茶葉をゲットしたから誰か誘おう思っとったんよ〜」
ニコニコと目を細めて笑うオスマンさんは器用に本を持ったまま私の手を引く。
「行こか。…大先生の話聞きたいんやろ?」
こてん、と首を傾げる彼は可愛らしい。でもどこか圧があって拒否は出来ず、ついて行く以外の選択肢はなかった。
オスマンさんに案内されたのは、初めて来る場所であった。幹部棟ではなく一般兵の住む棟の近くに存在する教会…カラフルなステンドグラスから淡い光が差し込むそこはとても美しい。
「こんなところが基地内になったんですね」
「いい所やろ?うちの軍は色んな人種がおるから宗教もバラバラでなぁ…グルッペンに頼んで作ったんよ」
「すごく綺麗…」
「あんま広いとこやないけどここの奥の庭も綺麗やで。今日は天気もええからそっちでお茶しよか。準備するから待っててな」
「あ、私もお手伝いします」
「ほんま?助かるわ〜」
オスマンさんと並んでお茶と茶菓子の準備をする。外に出れば晴天で、風に揺られてお茶のいい匂いが香ってきた。
「こうやって砂糖をいれて…さあ、召し上がれ」
「うわぁ、美味しそうです。いただきます!」
温かくて甘い紅茶を飲むと、大先生のことでいっぱいになっていた私の心が自然と落ち着く。オスマンさんをお茶菓子を頬張りながら幸せそうに頰を緩めている。
「考えて疲れた頭には甘いもんやで」
私の心を見透かすようなオスマンさんに敵わないなぁと思う。
「廊下で捨てられた子犬みたいな顔されたら誰も放っておけへんで。」
「え、そんな顔してました?」
「Aは自分の思ってる以上に分かりやすいで」
「は、恥ずかしい」
オスマンさんが笑うので恥ずかしくなり顔を覆う。
「で、迷える子羊さんは何を悩んどるん?」
首から下げた十字のネックレスをオスマンさんは取り出す。本当の神父かと思えるほど様になっている彼を信じて私もまた悩みを打ち明ける。
「私この軍が好きです。皆さん本当に優しくて面白くてこんなどこがいいか分からない私を受け入れてくれて…。
この間、兄さんに私がここへ来たことは大先生が関係してると言われました。それを聞いて、信じてた人に裏切られたみたいになってしまって…。
いつも通りの大先生を見たら何も言えなくて、真実を聞くのが怖いんです。」
これは私の弱さだ。
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鳩山(プロフ) - えみさん» コメントありがとうございます。懸命に生きる2人と彼らの話を素敵と言っていただき本当に光栄です…!最後までご愛読ありがとうございました! (2021年2月20日 16時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
えみ - rbr推しですがshaちゃんとくっついて欲しいと思ってしまう程の作者様の文才に引き込まれました…!とても素敵な話でした! (2021年2月19日 17時) (レス) id: 1597543406 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ブンブンさん» ブンブンさん!以前もコメントして下さいましたよね?本当ありがとうございます…!良かったら番外編でもよろしくお願いします…!最高に嬉しい言葉を本当にありがとうございました! (2019年11月11日 0時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ブンブン(プロフ) - 完結おめでとうございます!貴方の作品に出会えて本当に良かったです! (2019年11月10日 23時) (レス) id: 4a511d68cf (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - kogarashi343gooさん» コメントありがとうございます!本当に嬉しいお言葉ばかりで私からも感謝させてください!すごく励みになります…!今後は番外編然り、別作品然り、更新頑張っていくつもりですので今後ともよろしくお願い致します! (2019年11月10日 22時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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