白色と彼女 ページ29
東エリアの中でもAの担当する地域は、激戦区の中でも比較的戦いが少ない場所であった。しかしすぐ隣の地域はエイリアンの基地が存在する。軍の中でも防衛戦に最も秀でるひとらんらんと暗躍の得意なゾムはそんな激戦区に飛ばされていた。
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ひとらんらんとAは二人で歩いていた。武器を装備しているものの、このように穏やかな時間を過ごせるのも今日が最後だ。
明日にはグルッペンからエイリアンへ、宣戦布告が行われる。
Aは隣を歩く姿勢の正しい彼を横目で眺める。
「ひとらんさん、私のこれ、受け取ってもらえませんか?」
ひとらんの目がAの手の中にあったミサンガで止まる。
「…え、何かフラグみたいで怖いんだけど」
「フラグって」
口を閉ざすと威厳のある軍人なのに、その見た目には似合わず臆病な彼の一面にクスクスと笑ってしまう。ひとらんは自分より年下のAに笑われたことに恥ずかしがっているようでマスク越しの頰を赤くさせた。
「私、ひとらんさんが勝てるように願ってますから」
受け取らない彼の手に触れて、その手に白色のミサンガをつける。怖い怖い、と嘆く彼であったがAにされるがままになっていて本心でないことは嫌でも分かった。
「A、ここが戦場ってちゃんと分かってる?」
「もちろんですよ」
「なーんかAといると緊張感なくなるんだよな」
「も、もっと気を引き締めますね!」
ぐっと表情の緩まぬように真顔になるA。ひとらんはそんなAの顔を見てひとしきり笑って、彼女の頰に手を当てた。
「ダメダメ。そういうところだから」
彼は彼女の表情筋をほぐすように頰を触る。
「Aは笑ってなきゃ」
ひとらんの言葉に、何故だか無性に泣きたくなった。白の軍服を着た彼は、Aの世話係をしていたオスマンとよく似ている。
我慢しないと、溢れてしまう。
優しい彼へ、自分がどれほど非道なことをしようとしているのか…その罪悪感が、彼に気づかれてしまう。
「ひとらんさんは…幸せですか、?」
「戦争前に聞くことじゃないって…。
でもまあ、俺にしてはいい人生だったね」
清々しい彼の言葉。Aは笑う。良かった、と。
彼の幸せはまだ続く。
Aが選んだのは優しくて穏やかなひとらんらん。復讐を許さない彼の強さを知っているからこそ、彼を選んだ。復讐鬼が目覚めてやっとAの作戦は実を結ぶのだ。
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鳩山(プロフ) - 詩音さん» コメントありがとうございます…!返事がとても遅くなって申し訳ないです…!ハッピーエンドにしたくって最後書くのを頑張りましたのでそう言っていただけて本当に嬉しいです!ありがとうございました! (2020年6月7日 23時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
詩音(プロフ) - 完結おめでとうございます!最後までどうなるかわからなくてドキドキしました。ハッピーエンドが素敵すぎます…読ませていただきありがとうございます…。!これからも応援しています! (2020年3月10日 9時) (レス) id: e70b445cf3 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - カリンさん» コメントありがとうございます!頑張り屋な夢主をここまで見守ってくださって本当にありがとうございます…!素敵な物語と言って頂き大変幸せです…!これからも新作を投稿していく予定ではありますので今後ともよろしくお願いします! (2020年3月1日 0時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
カリン - 完結おめでとうございます!頑張る夢主がどういった結末を迎えるのかドキドキしながら最後まで読まさせていただきました。素敵な物語をありがとうございます!これからも応援しています! (2020年2月29日 23時) (レス) id: 84d76390cc (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます!自分の書いてて楽しいお話を書かせて頂いてそのようなお言葉をいただけて私は本当に幸せ者です…。今後も新作は出していくつもりですので、ぜひ今後ともよろしくお願いいたします! (2020年2月29日 22時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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