茅色と彼女 ページ23
我々という組織には14名の幹部がいる。次回の戦争はその14名総出で挑む。最初で最後の戦いだ。茅色の教授───エーミールもまた幹部のうちの1人。そんな彼へ訪問してきたのは、少女と女性の中間時点の顔を持つ彼女であった。
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「エイリアンの行動の予想、?」
「うん」
Aはエーミールに出された紅茶を飲みながら、目の前の彼に次なる情報を得るために質問していた。
「東、南、北が制圧された今…残るは西エリアだけが私たちの領土だよね。そんな中で西エリア以外で相手が動くのならどこかな、と思って」
エーミールは考えた末にポツリ、と「東やろうな」と声を落とした。
「東…?」
「単純に考えたら、やで?北は寒すぎますし南は暑すぎる。東は違う星からきた彼らでも一番過ごしやすいやろうし…。何より、人がいる」
「…エミさんも気付いてたんだ」
「まあ、勘の良い皆さんも気付いていると思いますけどね。エイリアンは地球侵略というよりも、人間の支配をしたいということは」
Aはそっか、と表情を暗くする。
「……次の戦いで、おそらく東への割り振りは少ないかと思います」
「…捨て駒ってこと?」
「いえ、西の防衛戦が中心となると言うことです」
「じゃあ、」
「おそらく俺やAさんは西やろな」
それはエーミールなりの優しさ。Aや彼は東を生き抜く力がないという遠回りな諭しである。
「どこに飛ばされても、頑張らないとね」
Aはエーミールの言葉に同意も、否定もせずに笑った。
「エミさん」
立ち上がったAは窓を見つめる。外は雪が降っていた。
「私ね、エミさんの幸せを願ってる」
「それはずっと前から知ってますよ」
「エミさんにとっての幸せって、何?」
彼女の声に合わせるように雪が一層吹き荒れた。
「俺の幸せ、」
「うん」
にこり、と笑うその姿はいつもの変わらないはずなのに、どこか遠い。
エーミールが手を伸ばしたって届きそうにない距離に胸騒ぎがする。
「俺の幸せは、この日常が崩れないことやね」
戦いの合間の一時的な平和。そんな束の間の時間に、優しい君と紅茶を飲むこのひとときがあまりにも優しくて…彼はそれを幸せだと言う。
「そっか…そうだね」
Aはエーミールに茅色のミサンガを渡す。エーミールはそれを受け取ると自分の足首にミサンガをつける。エーミールの一連の動きを見ていたAはその時間が確かに幸せであった。
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鳩山(プロフ) - 詩音さん» コメントありがとうございます…!返事がとても遅くなって申し訳ないです…!ハッピーエンドにしたくって最後書くのを頑張りましたのでそう言っていただけて本当に嬉しいです!ありがとうございました! (2020年6月7日 23時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
詩音(プロフ) - 完結おめでとうございます!最後までどうなるかわからなくてドキドキしました。ハッピーエンドが素敵すぎます…読ませていただきありがとうございます…。!これからも応援しています! (2020年3月10日 9時) (レス) id: e70b445cf3 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - カリンさん» コメントありがとうございます!頑張り屋な夢主をここまで見守ってくださって本当にありがとうございます…!素敵な物語と言って頂き大変幸せです…!これからも新作を投稿していく予定ではありますので今後ともよろしくお願いします! (2020年3月1日 0時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
カリン - 完結おめでとうございます!頑張る夢主がどういった結末を迎えるのかドキドキしながら最後まで読まさせていただきました。素敵な物語をありがとうございます!これからも応援しています! (2020年2月29日 23時) (レス) id: 84d76390cc (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます!自分の書いてて楽しいお話を書かせて頂いてそのようなお言葉をいただけて私は本当に幸せ者です…。今後も新作は出していくつもりですので、ぜひ今後ともよろしくお願いいたします! (2020年2月29日 22時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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