番外編:理想のヒト ページ49
これはAが愛する男を救うための××回目の"今日"に起こった、とある男のお話である。
ロボロは自身の生涯の中で、ここまで自分の理想の女性に出会ったのは初めてあった。
性別など気にせず、堂々と先輩幹部に立ち向かう凛々しさ。
華奢な身体をしなやかに使う鮮やかさと可憐さ。
そして何よりも美しく輝く白紫の瞳。
性格なんて関係ない。ここまで完璧な女性。
ロボロはAを見て一目で恋に落ちた。
彼女がシャオロンのことを好きなんて、ロボロにはどうでもいいことであった。
なぜなら、彼女という存在が、美しいままで生きているのを眺めるだけで心が満たされたからだ。
だからこそ、シャオロンの死に、取り乱し泣き喚くAを見た時は背筋が凍った。
理想が崩れてしまったのだ。
乱れた髪の毛、泣きはらした瞼、傷だらけの体。
ロボロの理想の凛々しく可憐で、美しい女性の姿がそこにはなかった。
──こいつは、俺の理想のAやない。
そう思ったロボロは、Aを指差して、他の幹部に聞こえるように大きな声で「こんなこと、言いたないけど…Aは泣かんもんな…。今日だって作戦を全部知っとった…。おれは、もうお前を信じられへん」と発言した。
丸くなる彼女の白紫の瞳だけは相変わらず綺麗で………。
「ごめんなぁ。でも安心してな。今、一番美しいお前のまま俺が殺したったから。」
その男は、眠るように死んだAの死体を舐め回すように触れていく。彼女の髪の毛から爪先まで、全部を。
頰は林檎のように赤色に染めて、まるで恋する乙女さながらだ。
「A、愛してるで?」
そして夜が明けるその日まで、ロボロはずっと死体と共に過ごすのだ。
.
..
...
「Aの意識が戻った」
「ロボロはどうするん?」
「Aはあいつの能力は軍に必要不可欠だから許すと言っていたぞ」
「はぁ!?あいつどんだけアホやねん!」
牢屋で一人拘束されていたロボロにバリトンボイスと犬のようにキャンキャン煩い声が聞こえてきた。
声の予想通り、ロボロの前にはグルッペンとコネシマが立っていた。グルッペンはコネシマを顎で促し、コネシマはそれに従って牢屋の鍵を開ける。
「俺を出してええんか?またあいつを殺すかもしれんで?」
「でも、お前が殺す時はあいつが弱っている時だろう?」
「…せやなぁ」
「Aから伝言だ。"殺れるもんなら殺ってみろ"だと」
それを聞いたロボロは腹を抱えて笑う。
「ほんまに、Aは最高の女やわぁ」
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白いろきつね。(プロフ) - 今更ながらに読ませていただきました すごい心を持っていかれるお話で涙腺が崩壊しながらも読ませて貰いました ループで心が壊れていく夢主さんを見ていて感情移入しちゃって、本当に心を揺さぶられる最高の作品でした。主様書いて下さり本当にありがとうございました! (2021年8月11日 0時) (レス) id: 02f1a6e36f (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 菜乃さん» コメントありがとうございます…!死に戻りは私の性癖でして、設定好きと言われて喜んでます。この作品はお気に入りの一つなのでコメント頂けて幸せです。こちらこそありがたいお言葉をたくさんありがとうございました。またどこかでお会いできることを願っております (2020年6月27日 19時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ・ちょこみんとさん» コメントありがとうございます…!流した涙がもったいないですよ(そっとハンカチを差し出す)本当に素敵なお言葉をありがとうのざいます!ちょこみんとさんからの言葉で今後も文字書きとしてやっていこうと思います。ありがとうございました…! (2020年6月27日 18時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
菜乃(プロフ) - 今更ながら一気に読ませていただきました…!めちゃくちゃ号泣しました…!このお話設定やストーリーも鳩山さんの文字の書き方も全部が好きで勢いでコメントしてしまいました…。素敵な作品をありがとうございました!! (2020年6月27日 15時) (レス) id: a5b7bd47a4 (このIDを非表示/違反報告)
・ちょこみんと - 全話一気に読まさせて頂きました!涙がボッロボロに出ました…感動します…鳩山さんの作品が大好きです!これからも頑張って下さい! (2020年6月27日 15時) (レス) id: 87dd4c4135 (このIDを非表示/違反報告)
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