君が休ませてくれるから ページ36
手紙を読み終える頃には私は立っていられなかった。顔面はぐちゃぐちゃで手紙だけは汚すまいと必死になっていた。
「…っ…ずるい……じぶんだけ、先に、…しぬくせに…」
嗚咽が止まらない。
「かっ、…こ…つけるな……ばか…」
じーんと鼻の奥が痺れるほど、熱を持った涙がとどめなく溢れてくる。
「あいつが信じた人を、俺が疑える訳あるか。ほら…不細工になっとる」
トントンは私と目線を合わせてハンカチで涙を拭いていく。きちんとハンカチを持っているのが几帳面な彼らしかった。
「大丈夫か？」
「…トントン。」
「どうした」
「最後に、勇気を貰ってもいいかな」
「勇気って、」
トントンは馬鹿にしたように笑ったが私の真剣な目を見て口を閉ざした。
「私、たくさん失敗してきたの。」
「…おん」
「たぶん…これからも失敗すると思う。それでも、私なら出来るよって…励ましてほしいの」
シャオロンとよく似た真っ直ぐな瞳を持つ彼に、私は背中を押してほしかった。頑張れ、と言われればもう一度だけ頑張れる気がした。──だからお願い、とトントンに告ぐのだ。
「はぁ…。」
トントンは本日何度目か分からない溜息を吐く。
そして私の背中を、ゆっくりと撫でた。
「え、なに…？」
「あんな。俺はそんな鬼やない」
「…どういうこと？」
「今にも倒れそうでボロボロな仲間に、頑張れなんて言うと思うか？お前は今まで散々頑張ってきたんやろ。少しは休まんと、体だけやなくて心が持たんぞ」
トントンの言葉に、私は声が出せなかった。
「どんなミスをしたのか俺は知らん。でもお前が必死に何かを頑張っとるのは感じとったんや。」
トントンの手は、泣きたいほどに優しい。
「よう、頑張ったな。」
「もう…また、泣きたくなるじゃん」
私は泣かぬまいと唇を噛み締める。それを悟ったトントンが私の唇に指を滑らせた。
「こう言う時は思いっきり泣くんや」
背中を叩く一定のリズムと優しい言葉に、私は我慢できずに泣き出した。
トントンが私を休ませてくれたから、
私はまた頑張れる。
「トントン。ありがとう」
私の中でとびきりの笑顔を彼に向ければ、トントンは虚をついたような表情を浮かべた。
「久々にお前のこと綺麗って思ったわ」
「なによいつでも綺麗でしょ」
「顔はよくても性格がこれやからな…」
私は冗談を言い合えるまでに回復していた。これで次なる"今日"に向けて意気込むことができる。
さあ、始めよう。
正真正銘の最後の"今日"を。
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白いろきつね。(プロフ) - 今更ながらに読ませていただきました すごい心を持っていかれるお話で涙腺が崩壊しながらも読ませて貰いました ループで心が壊れていく夢主さんを見ていて感情移入しちゃって、本当に心を揺さぶられる最高の作品でした。主様書いて下さり本当にありがとうございました! (2021年8月11日 0時) (
レス) id: 02f1a6e36f (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 菜乃さん» コメントありがとうございます…！死に戻りは私の性癖でして、設定好きと言われて喜んでます。この作品はお気に入りの一つなのでコメント頂けて幸せです。こちらこそありがたいお言葉をたくさんありがとうございました。またどこかでお会いできることを願っております (2020年6月27日 19時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ・ちょこみんとさん» コメントありがとうございます…！流した涙がもったいないですよ（そっとハンカチを差し出す）本当に素敵なお言葉をありがとうのざいます！ちょこみんとさんからの言葉で今後も文字書きとしてやっていこうと思います。ありがとうございました…！ (2020年6月27日 18時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
菜乃(プロフ) - 今更ながら一気に読ませていただきました…！めちゃくちゃ号泣しました…！このお話設定やストーリーも鳩山さんの文字の書き方も全部が好きで勢いでコメントしてしまいました…。素敵な作品をありがとうございました！！ (2020年6月27日 15時) (レス) id: a5b7bd47a4 (このIDを非表示/違反報告)
・ちょこみんと - 全話一気に読まさせて頂きました！涙がボッロボロに出ました…感動します…鳩山さんの作品が大好きです！これからも頑張って下さい！ (2020年6月27日 15時) (レス) id: 87dd4c4135 (このIDを非表示/違反報告)
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