初恋は叶わない ページ22
午後の授業が終わり試験期間の今、部活もない。隣のAに「帰るよ」と声をかける。
「あ、ひとらん。今日はゾムくんも一緒に帰っていいかな？」
「…もちろん。てか、俺が邪魔じゃない？」
「邪魔なんかじゃない！逆にいて欲しいの…！ね、お願い！」
「あー…はいはい。分かりましたよ」
拷問だ。しかし、Aのお願いを俺が断れるわけがない。もういっそのこと早くゾムと付き合えばいいのに。と心の中で溜息をつきながら教室の出口で俺達を待つゾムと合流した。
「ゾムくん待たせちゃってごめんね」
「気にしとらんよ。行こか」
ゾムはさらりとAの鞄を持つ。彼のエスコートにAはたじたじだ。
「ぞ、ゾムくん…自分で持てるから…！」
「いいっていいって。たまには甘えとき。な？」
「優しすぎない…？」
「惚れた子に優しくするのは当たり前やん。せやろ、ひとらん？」
俺に対して笑うゾム。何を考えているのかはさっぱり分からない。
「そうだね。Aももっと可愛くありがとうってお礼を言うべきだよ」
彼女の肩をいつも通りに叩く。安心したように俺の方を見るA。すると教室からAの名前が呼ばれた。どうやら忘れ物があったようで、彼女は一言謝ると教室に戻る。その後ろ姿を眺めながらゾムがポツリと呟く。
「お前らって本当スキンシップ多いよなぁ〜焼くわ、ほんまに」
「ゾム、Aにベタ惚れじゃん」
「おん。可愛いもんな」
「俺、邪魔じゃだからさ先に帰るね」
「……ひとらんも好きなんやろ？」
「…なにを？」
「惚けても無駄やで」
「…ははっ、幼馴染みってだけだから」
ゾムは何やら言いたげである。
「ほかに何かある？」
「ひとらんはその幼馴染みって言葉で逃げとるんやないか？」
逃げるとはどういうことだ。俺は何も知らないくせに…！とゾムに突っかかりそうになったが何とか気持ちをセーブさせる。
「おお、こわっ。目がマジやんか。」
「あのさ…ゾムは何が言いたいわけ…」
「俺は、Aが好きやけどひとらんも親友やと思っとる。親友の好きな人をただ奪いたい奴やないねん。好きなら正々堂々勝負しよや」
正々堂々勝負なんて出来たなら初めから戦っている。俺はゾムが眩しくて、……それでもって嫌いになった。
「なら、それは俺の完敗だよ」
ゾムにそう言い残して、Aを待たずに一人で家まで帰った。
(逃げられない離れられないでも叶わない)
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鳩山(プロフ) - 114514さん» コメントありがとうございます…！（そっとハンカチを差し出す）難民さんに刺さるお話があれば幸いです！ (2020年7月3日 19時) (
レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
114514 - ぐはっ（吐血） (2020年7月1日 21時) (レス) id: 3a17ec7a5b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 琥珀さん» 琥珀さんコメントありがとうございます…！難民として完結できたことを誇りに思います！今後とも活動は続けていきますのでよろしくお願い致します…！ (2020年4月7日 17時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - htrnさんの素敵なお話ありがとうございました……！ (2020年4月7日 7時) (レス) id: 742aa07519 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 外ピさん» コメントありがとうございます！htrnは私の最推しでして、自給自足のためにこの作品を作りました。その言葉に私は咽び泣くほど嬉しいです…！ありがとうございました！もう終わりに近づいてはおりますが、今後ともよろしくお願いします！ (2020年3月29日 21時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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