隣を歩いて ページ26
「チーノおはよう」
訓練場で見知った顔を見た私は彼の背中を軽く叩く。振り返った彼に笑顔はなく「…おん」と真面目な顔をしてまた前を向いてしまった。
「……チーノ？」
訓練中チーノはいつもと違っていた。鬼気迫る顔をして他の隊員を怖がらせてしまっている。訓練の教官を務めていたトントンさんの「やめ」の言葉にも彼は聞き入れようとせず、休憩時間を使ってひたすら自主訓練を行う。
「A、あいつ何であんなんなったか分かるか？」
「いえ…昨日まで普通だったんですけど…」
「そうよなぁ？今日はお前とふざけもせんしどうなっとるんや」
目頭を押すトントンさんに私は苦笑いして彼の背中をさする。するといつの間にか目の前にはチーノがいて。
「トントンさん。俺と勝負をしてください」
と真面目な顔で言い放った。
「勝負ってどういうことや？」
「模擬訓練ってことで。俺と一本の取り合いしましょ」
「…それでお前の気が晴れるならええで。ただし武器と異能の使用は禁止。これでええか？」
「はい」
橙色の瞳が力強くトントンさんを睨む。あまりの気迫に私は声をかけることすらままならなかった。
.
..
...
トントンさんとチーノの戦いはチーノの惨敗であった。同じ幹部でもやはりトントンさんは格が違う。二人の戦いを見るために集っていた兵士もいなくなり今は私と彼の二人だけ。
「お疲れ様」
彼の濡れた首筋に水を当てる。驚きもせずに彼はそれを受け取って悔しさを紛らわせるように一気に飲み込んだ。
「…ほんま俺は弱いわ…」
「珍しく落ち込んでるんだね」
「そりゃそうやわ」
「でもたまには真面目なチーノもかっこよかったけどな」
「お世辞はいらんねん…」
「なんでそんなに卑屈になってるの？」
私はチーノの前にしゃがみ込んで、目線を合わせる。
「だって言ってたやん。強い方がいいって」
「大先生と話してたの、聞いてたの？」
「…まあ」
「あの強いっていうのは誤解だよ。自分の道を真っ直ぐに進める…そんな人が好きってこと」
「トントンさんもひとらんさんもそうやな」
「私にとっては、チーノもだけどね」
目を細めて口元を緩める。
「私ね、私と同じ視点に立って隣を歩いてくれるチーノが好きだよ」
生まれて初めての告白。
告白された張本人はポカンと口を開けたままだ。
私は彼のジワジワと染まる耳を見つめていた。
「お、俺も好きや…！Aのこと大事にする！」
彼の言葉に私は笑ってお願いしますと頭を下げるのであった。
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🍞 - ご、語彙力が爆発してる、、すごすぎんか？ (9月24日 22時) (
レス) @page42 id: 42c1ea8f94 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 琥珀さん» 琥珀さんいつもありがとうございます…！番外編まで読んでくださって感謝しかありません…！また他作品は更新していくつもりですので今後ともよろしくお願いします！ (2020年3月14日 20時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 完結おめでとうございます！本編のほうも、番外編のほうも、鳩山さんの素晴らしい文章に引き込まれ、読んでいて幸せな気分になれました。これからも鳩山さんの作品を読み続けさせてください…！ (2020年3月14日 13時) (レス) id: 742aa07519 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - メオさん» コメントありがとうございます！告白までしていただいて嬉しいです！これからものんびり更新だと思いますがよろしくお願いします…！ (2019年11月12日 19時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
メオ - うん、好きだ(確信)ありがとう(嬉し泣き)頑張ってくださいね！！ (2019年11月12日 14時) (レス) id: 8aa2d098f2 (このIDを非表示/違反報告)
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