*カキツバタ ページ48
───人々の歓声が聞こえる。
赤い絨毯の上には、かつてβ国の家畜であった少女がフラワーガールとしてたくさんの花弁を落として祝福していた。
「さあ、お手をどうぞ」
軍服を着た鬱が手を差し出すと本日の主役の彼女は笑ってその手を取った。赤いカーペットの上を彼と並んで歩く。花嫁のベールを持つのは、彼女に救われた家畜の少女達だ。少女達は、林檎のように赤い頰をして花嫁を見ては笑顔を浮かべていた。
「何か嫌やわぁ。俺も歳食ったんかな…」
へらへらと笑う鬱の目には涙が浮かんでいる。
「兄さんしっかりしてよ。せっかくの晴れ舞台なんだから」
「分かっとる…でもいざAの花嫁姿を見ると父親心が…」
「ふふっ変なの。」
鬱が名残惜しそうに一歩一歩ゆっくりと進んでいくが、それもすぐに終わりがきてしまう。
「…A、幸せにしてもらうんやで」
「もちろんよ。それにしてもらうんじゃなくて、私がするの」
最後まで強気に笑う妹に鬱は豪快に笑った。そして、鬱の前に立つ男…ゾムへとAの手が渡るのを見守った。
それを最後に彼の涙腺は崩壊して、コネシマとシャオロンがゲラゲラと笑いながら彼の背を叩く。
「おいおい!大先生泣くのはまだ早いんちゃうか!?」
「止めるな…これは涙やない…汗や…!」
「なら汗かきすぎやろ。汚っ」
「うっさいわ!」
ぎゃあぎゃあと騒がしいギャラリーに結婚式に参列してたものは彼ららしいと大笑いだ。騒ぐ三人を横目に他の幹部達は本日の主役へと目を向ける。
ゾムの腕を組んだAは正装をした彼のかっこよさに息をのむ。ゾムもゾムでAに見惚れており、二人は見つめ合う。
「めっちゃ、綺麗やな」
「ゾムもかっこいいよ」
「嫁さんが綺麗なんは嬉しいんやけど、Aの花嫁姿見るの二回目なんがすごい複雑な気持ちや…」
「私も人生で二回もウェディングドレスを着るなんて思っていなかったわ」
「あ〜でも誓いのキスは初めてやんな?」
「……すけべ」
「やば。可愛すぎて今めっちゃちゅーしたい。してええか?」
「ダメに決まってるでしょ!」
「二人ともそろそろ進めてもいいだろうか?」
軽愚痴を叩き合う二人の目の前には軍服をきたグルッペンの姿があった。
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鳩山(プロフ) - ろわ。さん» コメントありがとうございます…!拙い文章でしたが楽しんでもらえたなら幸いです。嬉しいお言葉本当にありがとうございます…! (2019年11月27日 21時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ろわ。(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後の結婚式のシーンでは私までut先生みたいになりました...。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2019年11月22日 2時) (レス) id: a9da82584b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ロアさん» ロアさん!コメントありがとうございます!労いのお言葉まで…!最後まで読んでくださって本当にありがとうございました! (2019年11月21日 13時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ロア(プロフ) - 完結おめでとうございます!!( ;∀;)お疲れさまでした (2019年11月21日 8時) (レス) id: 148e7f1d83 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ウルさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいお言葉、そして完結まで読んでいただき本当にありがとうございました! (2019年11月21日 6時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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