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*サンビタリア ページ31

「大切なひとかぁ…」

Aはひとらんらんと別れて一人歩く。大切な人…思い浮かぶのは、鬱やグルッペンの顔。そして何故か出会ったばかりのエメラルドの瞳を持つ男。違う違うと首を振る。

「はぁ。考えても分からないわね」

パシンと自分を引き締めるために頰を叩く。音は外であるのにも関わらず意外に響いた。

「いい音したな〜」

あるはずのない声。Aが振り返らずその場を離れようとすると硝子に触れるように優しく手を引かれた。

「何で無視するん?」
「…いつからいたの?」
「Aが大切な人かって呟いた時から」
「初めからいた訳ね…!」
「何か悩んどるんか?」
「悩みってほどでもないかな。ゾムは今日は非番なの?」
「今から仕事やで〜朝飯食ったから任務に出るんよ。しばらくは帰ってこんかな!」
「しばらくって…いつまで?」
「ん〜早くてひと月…長くて一年?」
「えっ」

Aは途端に寂しくなる。任務と言っても2、3日で終わると思っていたのだ。

「寂しいん?」
「…まあ、ね。」

ゾムのことは好きか嫌いかと言われれば好きなのだろう。無性にAの母性を揺すぶってくることもあり、嫌いにはなれないのだ。否定をしなかったAにゾムははにかむ。

「そっかぁ。Aは俺が居らんくなったら寂しがってくれんねんな」
「その言い方は嫌よ。ゾムが消えていなくなりそうじゃない」
「じゃあ、俺がもし消えたらどうするん?」

ゾムのエメラルドの瞳がじっとAを見つめる。急な彼の質問にAは一瞬押し黙った。

「…仮定の話をするのは好きじゃないの。でも、そうね…消えたのならグルッペンの力を駆使して見つけ出してみせるわ。ゾムは、この組織にとって大切な人なんだから」
「それってさ結局誰の為?」
「どういうこと?」
「俺を見つけ出すんは、A自身のため?…いやグルッペンのため?それとも組織か?」

ゾムの心が揺れるように瞳も揺れる。

誰の為って、もちろん組織の為だ。自身が世話になっている組織の大事な幹部。それ以上それ以下でもない。

しかしAは心で思ったことを言葉には出来なかった。まるでもう一人の自分がそれは違うと否定するように言葉にならない。

「もう、待つのは懲り懲りなんよ。
やっと会えたんに。
Aはなーんも覚えてない。」

ゾムは最後にそれだけ言い残してその場を去った。

「待って!あなたは何を知ってるの…!?」

Aの声は虚しく廊下にこだまする。

*リナリア→←*ゲッケイジュ



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作品ジャンル:ラブコメ
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鳩山(プロフ) - ろわ。さん» コメントありがとうございます…!拙い文章でしたが楽しんでもらえたなら幸いです。嬉しいお言葉本当にありがとうございます…! (2019年11月27日 21時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ろわ。(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後の結婚式のシーンでは私までut先生みたいになりました...。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2019年11月22日 2時) (レス) id: a9da82584b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ロアさん» ロアさん!コメントありがとうございます!労いのお言葉まで…!最後まで読んでくださって本当にありがとうございました! (2019年11月21日 13時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ロア(プロフ) - 完結おめでとうございます!!( ;∀;)お疲れさまでした (2019年11月21日 8時) (レス) id: 148e7f1d83 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ウルさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいお言葉、そして完結まで読んでいただき本当にありがとうございました! (2019年11月21日 6時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鳩山 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年10月27日 22時

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