＊グラジオラス ページ23
外道丸と走ること数十分。そろそろ着くとゾムに言われた。現在走るは森の中だ。一体ここに何があるのかAには想像もつかなかった。
森の開けた場所、そこでゾムは手綱を引く。外道丸も場所が分かっていたように暴れずに足を止めた。
「ここ…」
ゾムが軽々と降りてAの腰を持つ。Aも彼に甘えて降ろしてもらった。
「ありがとう。それにしてもここ、すごいわね」
「せやろ？めっちゃ綺麗やねん」
そう。Aの目の前に広がるのは一面の花畑だったのだ。黄、赤、白、桃、緑の自然でできた絨毯。Aが歩くのも躊躇うほどの光景であった。そして目を瞑り春の花の匂いをめいっぱい堪能する。
ゾムは花畑にバタンと倒れ込んだ。
「ここでな、昼寝すると気持ちいいんやで」
「すごく贅沢ね」
Aも服が汚れることなど気にせず横になる。
「綺麗やろ！ずっと×××に見せたかったんよ」
「嬉しい。こんな場所初めてきたよ！ありがとう××」
Aが横になったその時、脳裏にノイズがかかったように映像が流れ込んできた。ハッと起き上がり隣にいるゾムを見やる。
「どないしたん？」
「いや…何でもない」
Aの歯切れの悪い返事にゾムはハテナマークを浮かべる。
「この場所、気に食わんかったか？」
「そんな訳じゃないよ。ここは、とても素敵。感動したもの。…一瞬何か変な映像が頭に流れてきてね…」
「映像ってどんなん？」
「一瞬だったからあまり覚えていないけど、誰かと花畑にきてた…？」
「何で疑問形なん！もしかしたら昔の記憶とかやったりして！そんな深く考えんでいいんちゃう？」
「そういうもの？」
「そんなもんやで」
先ほどとは立場が逆転して、今度はゾムが子供に言い聞かせるように優しく話しかける。Aは急に自分が子供のようだった事に気づいて顔を赤くさせた。
「そうだ…こんなに素敵な花がたくさんあるのだから栞にしてもいいかしら？」
「しおり？って本に挟むやつ？」
「ええ。そうよ。せっかくだから何か形に残したくって」
「でも花って枯れてしまうやろ？」
「ふふっ、押し花って知ってる？」
「花を押すんか？」
「正解。名前の通りだから分かりやすいわよね。紙を使って水分を取るの。ドライフラワーにするより簡単に作れるのよ。だから、なるべく水分が少なくて平べったい花を探しましょ」
「ふーん、あんた物知りなんやな」
「ゾムさんが物知らずなだけよ」
二人は顔を見合わせて笑い合った。
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鳩山(プロフ) - ろわ。さん» コメントありがとうございます…！拙い文章でしたが楽しんでもらえたなら幸いです。嬉しいお言葉本当にありがとうございます…！ (2019年11月27日 21時) (
レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ろわ。(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後の結婚式のシーンでは私までut先生みたいになりました...。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2019年11月22日 2時) (レス) id: a9da82584b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ロアさん» ロアさん！コメントありがとうございます！労いのお言葉まで…！最後まで読んでくださって本当にありがとうございました！ (2019年11月21日 13時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ロア(プロフ) - 完結おめでとうございます！！( ；∀；)お疲れさまでした (2019年11月21日 8時) (レス) id: 148e7f1d83 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ウルさん» コメントありがとうございます！とても嬉しいお言葉、そして完結まで読んでいただき本当にありがとうございました！ (2019年11月21日 6時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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