【d!】アキレアの祝福を【企画】 (ページ5)

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つかまえた！ページ5

「なぁおねーさん。名前なんて言うん？」
『…』
「俺早う帰らな色々怒られてまうんやけど。お願いだから出してや」
『…』
「あ、おねーさんのそのナイフ綺麗やな。新品？」
『…』
「なぁなぁ暇なんやけど」
『…』
「おねーさん無視せんといてや」
『……………………………え、あんた本当に幹部？』

初めは無視をしていたが、ここまでくると最早うるさい。え、何、こいつ幹部なんじゃないの？危機感ないどころか能天気では？間違えて一般人捕獲したんじゃない？

顔を顰めて檻に近づき顔を覗き込む。へらへらしたままのどこか胡散臭い表情にますます私の顔が歪んだ。

『……変なやつ』
「褒め言葉？」
『貶してんの』

また椅子に座り直してナイフを手入れする。
ただでさえ目の前の幹部もどきのせいで作業に集中できないと言うのに、近くに置いてあった通信機越しになにやら言い争う声がして喧しい。
暫くは我慢していたが、苛立ちがピークに達した私は思わずそれの電源を切った。

今の声は上官だろう。どうせまた奥さんと喧嘩しているんだ。よくあるやりとりに呆れつつ檻に視線を戻す。すると、男はまだにこやかにこちらを見つめていた。

『…なに？』
「いや？なんでもないで。」
『…それにしては随分お熱い視線ね』

ここまでくるといっそ恐ろしい。一切の怯えを見せない彼。こんな状況にも関わらず、まるで自分に勝算があるかのような様子だ。

何か嫌な予感がする。私は彼から視線を外して再び通信機の電源を入れた。

《……………》

通信機からは何も聞こえない。痴話喧嘩は終わったのか？いや、しかし話し声が一切しないのも何かおかしい。
…まさかとは思うが彼が何か知っているのか？
そうゆっくりと檻を見やると、なんと彼の姿が跡形もなく消えていた。

『っな…！？』

…いつの間に。

鍵は平然と空いている。壊されたのではない。まるで正当法で開けたかのように自然と空いていた。
慌てて腰のキーケースに触れる。

『…ない』

鍵が、なかった。