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それはきっと間違いではなかった ページ24

今も昔も、女性が兵士になることは珍しいことだった。
筋力的な問題もあろう。
男所帯のここで生き残ることはかなり苦労したはずだ。



 教官は一寸だけショッピを見ると、すぐに視線をさげた。
話し始めるのはすぐだった。



「先代の国王陛下に憧れたから、と言ったら笑うのかな?」
「まさか。そんなことしませんよ」



 先代の国王はショッピが幼い頃に亡くなっていた。
彼女は先王の思想に惹かれて軍入りをしたらしい。
しかし彼女が彼の元で働けたのは、たった一年だけだったという。



「私が学校を卒業してすぐに先王が身体を壊してね。
それから一年間しか私はあのお方の元でしか働けなかった」



 今はその息子が国王となっている。
だが、王子が即位してから国は大分変わってしまった。



「先王が死んで数年経った時、知り合いの兵士からこの学校に勤めて欲しいと頼まれた。
正直今の王政は好きじゃない。だからそのままここに来た」
「……まあ、前の方が良かったって声はよく聞きます」



「思想に毒されるとろくなことがない。
こうして国の反乱分子を育てているようなものなのだから」





(ああ、確かに。
ここにいた頃は分からなかったけれど、卒業生はみんな口をそろえて現国王の不満を言っていたな)






「先生のおかげですね」





(先生のおかげで、俺らは何が正しいかを考えられる)






「……そういや、お前だけは私を教官とは呼ばなかったね」
「ああ……。なんか、先生の方がしっくりきて」
「お前は、成績は普通だったけど別の意味で素質はあると思っていたよ」




 くしゃくしゃと頭を撫でられて、ショッピは悪い気はしなかった。
間違いなく彼女は自分の恩師で、自分の正義は彼女なのだと思った。





「こちら側の第一要塞が陥落しました。駐屯していた兵士は自決を図り……」



 それは敗戦した翌日の朝のことだった。
現在分かっている死者のリストを見ながら話す陸軍参謀長官は淡々と事を進めていった。
 ショッピはこっそり貰ったそのリストの、ある一点を見て僅かに瞼を伏せる。






「……先生」






 自決した兵士の名前には、彼女の名前が書かれていた。





 

それはきっと間違いではなかった→←それはきっと間違いではなかった syp (鯉口)



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作品ジャンル:ラブコメ
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作者名:軍パロを愛する連合軍 x他11人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年6月1日 12時

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