気に入らない ページ12
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それに、あぁ、まただ。
「なぁ、A、起きとる？」
か細いけれど、確かに聞き取れる隊長の声。
私はこういう時、決まって寝たフリをする。
うっすらと寝息のように息をしながら。
そうすると、彼の独り言が聞こえてくるのだ。
「ごめん、ごめんなぁ、みんな。俺が不甲斐ないばっかりに、守ってやれんかった。」
「俺が隊長やから、また部下がたくさんいなくなってもうた。」
「なのに、俺ばっかり生き残って......。」
ベッドのシーツ越しの、少しくぐもった声が小さく響く。
ぐす、ぐすと鼻を啜る音がする。
医務室に来てから私が知る限りほとんど毎日こうだから、きっと今までも、独りのときにこうやって自分を責めていたのだろう。
それはまるで己を殺す呪詛。
勝手に聞いてるくせして、聞いてるこっちの身にもなってほしい、なんて考えてしまう。
こんなことになるまでそんな姿、一度も見たことはなかった。
見せてくれたことはなかった、の方が正しいか。
隊長は強いお方だ。
肉体的にも、精神的にも。
すぐにいじけたり、おちゃらけたりもするけれど、嫌なものを溜め込まずに、上手い具合に発散させている方だと思う。
そういう意味の強い。
けれど、それは弱い姿を見せたくない、と隠していたのだろう。
あぁ、私はあなたの特別になりたかった。
弱い姿を無遠慮に見せてくれるような、そんな存在に。
今だって、もしかしたら私の寝たフリに気付いているのかもしれない。
でも、きっと私が起き上がって心配しても、隊長はいつもみたいに笑って、無かったことにしてしまうのだろう。
隊長の辛いときに傍にいることすら出来ない私に、いったい何が出来る？
こんな時でも、私が隊長に寄り添うことが出来れば、私のことを見てくれるのではないか、なんて下衆なことを考えてしまう自分が恨めしい。
それなら、私が倒れたときには、部下の1人としてでもいいから、私のことも思い出してほしい、だなんてあまりに酷いだろうか。
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作者名：軍パロを愛する連合軍
x他11人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2020年6月1日 12時
