ブルーサファイアの姫君 ページ9
熱烈なブルーサファイアを連想させるその瞳は、紛れもないストラスブール国の象徴。トントン・シュヴァインは自分に背を向けて凛と立つその少女を見つめていた。少女は優雅な作法で周りへ視線を配る。
「ふふ。挨拶が遅れてしまいましたわ。わたくし、A・ラ・ストラスブールと申します。以後お見知り置きを」
ぺこりと可愛らしく彼女は頭を下げる。そんなことよりも少女が名乗った名前の方が彼に衝撃を与えた。
「…ストラスブール…」
トントンへ嫌味を言っていた一人がぽつりと溢す。それを拾ったのは少女も同じであったらしい。にこりと愛想の良い笑みを浮かべて頷く。
「えぇ。わたくしストラスブール王国第一皇女のAでありますわ。それにしても…貴方方…挨拶が遅いのではなくって…?わたくしだから良いのですが他の王族への態度はなくってよ。ストラスブールの名を背負いここへ来ていることを忘れてはいけません」
「それともう一つ。彼への扱いですわね」
彼女が初めてブルーサファイアをトントンに向けた。
「彼もまた我が子の一人。わたくしの身体の一部と言っても過言ではありませんわ。同じ学び舎で学ぶ者同士、手を取り合う必要がありませんこと?」
偽善をまぶしたような言葉に期待した自分が馬鹿みたいに思って目を逸らす。結局王族と言うものは、自らは関わらずの態度を変えようとはしないのだ。そんなトントンの思いとは裏腹に、Aはまだ言葉を続ける。
「それにここはストラスブール国ではありません。王族も貴族も関係ないのです。わたくし達はみな、平等でありますわ。……平等という学園の方針の元で貴方方を注意させていただきます。もう、二度とこのような真似はお辞めなさい。」
その言葉はトントンに二度目の衝撃を与えた。
誰だって地位があれば命令することは容易いのに、わざわざそれを捨ててまで国民を守ろうとする姿勢に、トントンは生まれて初めて、胸が打たれた。
「お、皇女様がそのように仰るのであれば…」
「おっ、おい挨拶が先だろう…!」
「もう過ぎたこと。それとわたくしのことは気軽にAとお呼びください。貴方方もまたわたくしの大切な方々ですから」
どこまでも慈悲深い彼女にその場にいた面々は皆、Aという人間に惚れてしまうのであった。
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枕の怨念ぅ - 凄く親近感の湧く小説でした!面白いです! (11月18日 16時) (レス) @page5 id: 7f1a8024d0 (このIDを非表示/違反報告)
くれぴと - 夢主様考えることが言い方悪いけど欲望に忠実すぎて逆に幼子みたいで少し可愛らしいと感じる自分がいる...これうちだけかな? (2023年5月7日 20時) (レス) id: e2b452ca9a (このIDを非表示/違反報告)
春風駘蕩(プロフ) - コーネコネコーネは笑う⋯めっちゃニヤついてしまった⋯ (2022年9月17日 23時) (レス) @page14 id: 34351208ff (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - knさん…名前めっちゃコネるやん…不覚にもねるねるねーるねを思い出してしまった…。すみません…。 (2020年12月11日 5時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - こすずめさん» コメントありがとうございます…!一応チラッとだけ概要に書いているのですが、バチコリと読んでおります!元ネタは某なろう系のものです!お褒めの言葉並びに応援のお言葉をありがとうございました…!本当に励みになっております! (2020年9月14日 2時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
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