因縁はいつまでも続く ページ45
人気のない中庭に来た二人。Aの手が離れたのを機に、シャオロンはやっと口を開いた。
「優勝出来なくてすまん」
Aは静かに瞬いて、そして表情を緩める。
「いいえ。上級生も出場している大会で準優勝なんて立派ですわ」
「Aが俺の勝ちを信じてくれたのに…俺は返せるもんがないわ」
「…まだ、終わっていませんでしょう」
シャオロンが顔を上げる。そこには相変わらず笑うAがいた。何が終わっていないんだ、と口を動かそうとしたが、彼が言葉を放つよりも早く第三者の笑い声が横槍に聞こえてくる。
「剣術大会は無様だったな」
愉快そうに目を歪めて近づいてくる人物なんて限られている。シャオロンがはぁ、と溜息を隠しもせずに見やる。そこには彼の兄である男と、もう二人の影があった。
「あの時は世話になったな」
「ジベル、弟なのに手加減はなしでいいんだな」
「あぁ。この汚れた血の流れる男が僕の弟なわけないだろう。それに彼に恨みがあるのは君たちの方じゃないか。好きにしてくれ」
ジベル、と呼ばれた男はシトリンの瞳を細めたまま手を上げる。シャオロンの隣にいたAもすぐに彼の後ろに控える男たちが、前にシャオロンを追いかけていた上級生であることが分かった。
「もう二度と剣を構えることが出来ないぐらいにしてもらうんだな。そうすれば夢など見ることもなくなるだろ」
じりじりと男二人が距離を縮める。シャオロンはAを背に隠すと堂々と立ったまま逃げようとはしなかった。
「A、中庭を通って走れるか」
小さな呟きにAは頷かない。それどころかじっとシャオロンを見るだけ。シャオロンはサファイアの強い視線に耐えられずに舌打ちする。せめて彼女を逃すことができれば、と思ったのに。どこまでも勝手な人だと、そう思う。
「俺な、誰にも言ってなかったけど強くはないんやで。あんたが信じるに値しない凡人なんや。なのに…何で、そんな、澄んだ目を向けるん?」
「リオルディ家の当主はあなたが相応しいと思ったからです」
「…なんだとっ!?」
Aの言葉はシャオロンよりもジベルに刺さる。彼女が王族であることも忘れて真っ赤な顔で怒鳴る男。
「お前ら、金は上乗せする。この女もやってしまえ」
その言葉に二人の男は笑った。そしてシャオロンとAに掴みかかるように腕を振るった。
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枕の怨念ぅ - 凄く親近感の湧く小説でした!面白いです! (11月18日 16時) (レス) @page5 id: 7f1a8024d0 (このIDを非表示/違反報告)
くれぴと - 夢主様考えることが言い方悪いけど欲望に忠実すぎて逆に幼子みたいで少し可愛らしいと感じる自分がいる...これうちだけかな? (2023年5月7日 20時) (レス) id: e2b452ca9a (このIDを非表示/違反報告)
春風駘蕩(プロフ) - コーネコネコーネは笑う⋯めっちゃニヤついてしまった⋯ (2022年9月17日 23時) (レス) @page14 id: 34351208ff (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - knさん…名前めっちゃコネるやん…不覚にもねるねるねーるねを思い出してしまった…。すみません…。 (2020年12月11日 5時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - こすずめさん» コメントありがとうございます…!一応チラッとだけ概要に書いているのですが、バチコリと読んでおります!元ネタは某なろう系のものです!お褒めの言葉並びに応援のお言葉をありがとうございました…!本当に励みになっております! (2020年9月14日 2時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
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