検索窓
今日:76 hit、昨日:117 hit、合計:1,175,686 hit

覚悟の重さ ページ42

じりじりとシャオロンを追い詰めて、ベニトアイトはそれはそれは愉しそうに笑った。

興奮させてくれるぐらいに剣術に秀でており勝負を長引かせてくれる。そしてなにより自分より少しだけ劣る、そんな彼が最高の敵だったからだ。やはり自分の勝てない戦いは楽しくない。

──取った…!

 コネシマの剣がシャオロンの首を捕らえる…!

「止めッ」

 審判の声にコネシマは目を瞬かせた。自由になった両手で目の前の男を睨んだまま握りしめる。

「なるほど…ずっとカウンターを狙っとったんやな」

 コネシマの剣は、闘技場の端へ転がっていた。無防備な彼へシャオロンは刃先を向けて荒い息のまま頷く。

「お前みたいな天才に俺が勝つには、勝負の決まる一瞬の隙を狙う必要があったからな」
「してやられたわ…。名前も知らん男に負けるとは俺も慢心し過ぎたか」
「…今回ばかりは負けられん理由があったんや」
「俺を負かした男のその理由、是非とも知りたいわ」
「勝つと彼女に誓ったから、やで」

 シャオロンは刃先をやっと下に向けて柔らかく微笑んだ。人を煽る笑顔が特徴的だった彼の素にコネシマは「それは確かに俺には勝てんな」と素直に負けを認める。互いに礼をして握手を交わし歓声が二人を包む中、コネシマは真正面にシャオロンを見た。

「お前は俺を天才なんて言うたけど、本物の天才に比べれば俺なんてカスやで」
「……」
「決勝戦、楽しみにしとるな」

 ベニトアイトを細めた男は、すぐに雰囲気を変えて手を振った。シャオロンはそんな彼の後ろ姿を眺めていたのであった。

.
..

 シャオロンはその後も痛む手を感じさせないぐらいに快進を続けた。家柄と伝統を重んじる貴族の子弟たちの中で、金で爵位を買ったリオルディ家は決して認められるような人物ではない。それなのに闘技場は、どこからともなく彗星の如く現れたシャオロンに夢中となった。

 決勝戦前に選手には休憩が与えられ、シャオロンの足は迷うことなく一人の女性へと向かう。今や会場の主役と言っても過言ではない彼の動向に皆の視線が集まる。

「A」
「お疲れ様です」

 二人の従者を後ろに控えさせ、陽光に照らされて輝きを増すブロンドが彼へ清潔なタオルを渡す。

「なあ、見てくれてたか?」
「えぇ。とても素敵でしたわ」
「次も絶対勝つ」
「…信じてますわ」

無邪気に笑うシトリンを見て遠巻きに恋した女子生徒がほぅと溜息を漏らした。

天賦の才を持つ者→←祈るその先には



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (925 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2079人がお気に入り
設定タグ:wrwrd! , d! , 軍パロ   
作品ジャンル:ラブコメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

枕の怨念ぅ - 凄く親近感の湧く小説でした!面白いです! (11月18日 16時) (レス) @page5 id: 7f1a8024d0 (このIDを非表示/違反報告)
くれぴと - 夢主様考えることが言い方悪いけど欲望に忠実すぎて逆に幼子みたいで少し可愛らしいと感じる自分がいる...これうちだけかな? (2023年5月7日 20時) (レス) id: e2b452ca9a (このIDを非表示/違反報告)
春風駘蕩(プロフ) - コーネコネコーネは笑う⋯めっちゃニヤついてしまった⋯ (2022年9月17日 23時) (レス) @page14 id: 34351208ff (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - knさん…名前めっちゃコネるやん…不覚にもねるねるねーるねを思い出してしまった…。すみません…。 (2020年12月11日 5時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - こすずめさん» コメントありがとうございます…!一応チラッとだけ概要に書いているのですが、バチコリと読んでおります!元ネタは某なろう系のものです!お褒めの言葉並びに応援のお言葉をありがとうございました…!本当に励みになっております! (2020年9月14日 2時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鳩山 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年5月31日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。