【d!】断頭台で首を斬られたのでもう一度人生やり直します

祈るその先には ページ41

剣術大会当日。天気にも恵まれて、空は快晴となっていた。Aはエーミールとゾムと共に試合を観戦する。

「あぁ…もうすぐ彼の番だわ…どうしましょう…わたくしの方が緊張します…」

　両手の指を絡めて祈るような形で闘技場を見つめる。従者二人はそんな彼女を微笑ましく見ていた。

「あんたが認めた人なら大丈夫やろ」
「そうですよ。そんなに肩の力を入れずに気楽に気楽に」

　二人に励まされたAはブルーサファイアの瞳を潤ませ、騎士の誇りを懸けて戦う男たちを見ていた。元より血生臭いのは嫌いな彼女は模擬刀が掠るだけで小さく悲鳴をあげている。ゾムはそんな彼女を横目で見つつ、エーミールの首を締めたことを思い出し、あの時は悪いことしたなーと呑気に考えていた。エーミールはそんなゾムの考えを察して苦笑している。…まあ、なにはともあれ三人は仲良く剣術大会を満喫していた。

　そして、ついにシャオロンの番がやってきた。

Aは観客席にいることも忘れて立ち上がる。声こそかけはしないが、彼女の手を握る汗が気持ちを物語っていた。

　黒いマントが風で揺れると、黄金の刺繍糸で施された翼が羽ばたく。細身でありながらどこか貫禄のあるシャオロンは目の前の相手を見て、笑った。

「初戦から、こりゃ手強いな」

　シャオロンの視線を受けた男もまた笑う。

「初戦の相手は雑魚と決めつけとったけど、なんだか面白そうやんけ」

　シトリンに対峙するは、ベニトアイト。

「両者──始めッ」

　審判の声により、試合は開始される。
金属ではなく、鈍く響く木製の剣が重なる音が辺りに広がった。

.

　何度も重なる剣が風を切る音と、湧き立ち、熱を持つ観客の声だけで彼らがどれだけレベルの高い戦いをしているかがAには分かった。…それと同時にシャオロンが押されていることも嫌に理解していた。
　積極的に攻撃を仕掛けるコネシマに対し、彼はそれを防ぐのに徹していたからだ。

「逃げるだけじゃ、勝てやせんぞ！」

　吠えるコネシマ。戦いが長引けば長引くほど彼は楽しそうに力を増す。

「ハッ…好きに言ったらええやんけ！」

　負けじと吠え返すが、軽々と動くコネシマに比べてシャオロンの顔には汗が滲んでいる。

──あかんな。やっぱり手が、痛むわ。

　痛めた手首はまだ完治していない。コネシマの重たい斬撃を受けるたびに手が痺れた。

──けど、負けれんのや。

　シャオロンの視線の端には祈るようにこちらを見る彼女がいた。

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