闘う理由は明白だった ページ40
くすくすと上品に笑うブルーサファイアは猫みたいだな、とシャオロンは思った。いつ懐くのか、離れていくのかも分からない猫のような不安定な存在。
今はシャオロンに擦り寄ってきているが、シャオロンが撫でれれば警戒して離れていきそうだった。それでも、シャオロンは彼女に聞きたかった。
「なぁ、何で俺にマントをくれたん?」
彼女が目を丸くする。
「兄貴…いや、あの人も言っとったけど俺はリオルディ家の正式な後継者やない。それどころか母親は異国人の娼婦やで?」
「……それがわたくしがマントを渡さない理由になりまして?」
「…あんたのことは知っとった。A・ラ・ストラスブール。それからあんたの交友関係も、な。ゼネバスのグルッペン、ヴーヴェのコネシマ、倭国のひとらんらんに、…ストラスブールのトントン。どいつもこいつも純潔のお貴族様やろ。」
出会いは本当にたまたまだった。目の前の女がよそ見をして自分がぶつかってしまった、それだけ。貴族らしいとは到底言えない自分に臆することなく言い返す彼女の存在が気になって調べてみれば、彼女は誰よりも高貴な血を持つ皇女だったのだ。
そんな彼女が、自分を理解してくれるはずがないと信じ切っていた。
───マントやって、最初はひとらんらんに渡すつもりだったくせに、同情して俺に渡したに違わへん。同情なんて、いらんのや。
肩にかかったマントに手をかける。今にも彼女へ突き返してやりたかったが、先程の彼女の発言を思い出すと手が止まった。
そんなシャオロンを見兼ねてAが一歩前に踏み込む。シャオロンの頰を撫でると「王族も貴族も、商人も関係ないですわ。わたくしは、シャオロン・ウォン・リオルディに勝ちを見ました。それだけです。確かに最初はひとらん様に渡そうと思っていましたが、女の心は秋の空なのですわよ?」と笑いかけてきたのだ。
白くて、小さなその手。
シャオロンが握りしめれば折れてしまいそうな手なのに、その手は大きく暖かい。
生まれたことすら否定され続けられ、誰からも勝ちを望まれなかった自分を、彼女は、
「…Aの気が変わらんように頑張らんとな」
実の父にやっと取り付けた約束は、決して簡単なものではなかった。
──剣術大会で一位を獲る。そうすれば、俺を後継者として見てくれるんやったな。
シャオロンは生まれて初めて、この人の為に戦いたいと思った。だから口には出さずに小さなレディに誓いを立てるのだ。
2073人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
枕の怨念ぅ - 凄く親近感の湧く小説でした!面白いです! (11月18日 16時) (レス) @page5 id: 7f1a8024d0 (このIDを非表示/違反報告)
くれぴと - 夢主様考えることが言い方悪いけど欲望に忠実すぎて逆に幼子みたいで少し可愛らしいと感じる自分がいる...これうちだけかな? (5月7日 20時) (レス) id: e2b452ca9a (このIDを非表示/違反報告)
春風駘蕩(プロフ) - コーネコネコーネは笑う⋯めっちゃニヤついてしまった⋯ (2022年9月17日 23時) (レス) @page14 id: 34351208ff (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - knさん…名前めっちゃコネるやん…不覚にもねるねるねーるねを思い出してしまった…。すみません…。 (2020年12月11日 5時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - こすずめさん» コメントありがとうございます…!一応チラッとだけ概要に書いているのですが、バチコリと読んでおります!元ネタは某なろう系のものです!お褒めの言葉並びに応援のお言葉をありがとうございました…!本当に励みになっております! (2020年9月14日 2時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ