【d!】断頭台で首を斬られたのでもう一度人生やり直します

美しいものは保護するべき ページ38

シャオロンは最も容易くひとらんらんは居ないと言い切った。固まるAを見て「ひとらんは故郷の用事とかで今回の剣術大会は欠席するそうやで」とさらに追い討ちをかけてきた。

「わたくしのがんばりが…！」

　ひいん、と泣きたいのを堪えてマントを入った袋に力を込める。絶対に馬鹿にされると思っていたが意外にも目の前の男は優しく「お疲れ様」とだけ言う。

「ま、ストラスブールの皇女が刺繍をいれたマントなら貰い手はたくさんおるやろ」
「それはそうかもしれませんが…ところでわたくしのこと知ってましたのね」
「人脈作りは基本やん」

　へらりと笑った彼はいつも通りに戻った。そろそろ用事もなくなったので帰ろうとAが別れを告げようとしたその時、背後から笑い声が聞こえてくる。

「はっはっはっ。お前が人脈作りだと？笑わせてくれるな」

　馬鹿にするように笑ったのは、上級生であることを示す青いネクタイをした男子生徒だ。彼はブロンドの髪を撫でながら近づいてくる。見えた瞳は、シャオロンと同じシトリンだった。

「いい加減夢は捨てるんだな。妾腹のくせに卑しいぞ」

　Aはその人物を知っていた。彼こそが自分の知るリオルディ家の第一子だったのだ。

「それなのにお前はまだリオルディと名乗るのか？図々しいにも程があるぞ。どうやら父上と馬鹿みたいな約束をしたみたいだがそれは無駄だ。」
「…無駄かは分からんやろ」
「お前みたいな半端者が、剣術大会で一位を取れるわけがないだろ？もちろん僕のように学力で一位を取れるわけもない。……お前みたいな奴はこんな学園を辞め、家を去り、野垂れ死ぬべきなんだよ」

　男は彼と同じシトリンを持つのに、嫌に濁っていてAは見ていて面白くなかった。彼の言葉によりシャオロンの持つ綺麗なシトリンまで汚されそうで、庇うように一歩前に出る。

「大事なお話の最中に失礼しますが、シャオロン様はとても素敵な方ですわ」
「これはこれは…ストラスブール令嬢。ご機嫌よう。まさか貴女のような方が駄犬といるとは思いもしませんでした」
「ふふ…駄犬がなんのことかは分かりませんが、わたくし、シャオロン様の美しいシトリンのような瞳を眺めるのが好きなんです。あぁ、わたくしったら…！大事なことを忘れておりましたわ」

　わざとらしく挨拶を無視して、袋からマントを取り出す。それをシャオロンの肩にかけて「剣術大会、頑張ってくださいませ」とブルーサファイアが細まった。

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