巡り巡って、あなたを知る ページ22
しゅわしゅわと音を立ててソーダが弾ける。Aはそれを片手に二人の男をじっと見つめていた。
───コネシマ様も、ひとらん様も対照的な色をしてますのね。
黄金に輝く色を持つコネシマが朝ならば、漆黒を纏うひとらんは夜だ。瞳に散りばめられた宝石は力強く光輝いており、美しい。Aの中での将来の旦那ランキングに二人の名前を入れておこうと静かに笑みを深めた。
そんな時だ。
「A」
ひとらんとも、グルッペンとも違ったテノールの声がかかった。二人の宝石から声の方向に視線を移せば、燕尾服に赤いネクタイをしたトントンが立っていた。
「あら、トントンではありませんか」
天気がいいですね、ぐらいの親しみ易さを出してAが笑う。笑いかけられたトントンは少しだけ頰を朱に染めつつ、何かを覚悟したように膝をついた。
「A・ラ・ストラスブール様。よろしければ、俺と一曲踊りませんか」
「まあ」
トントンの意外な行動に口元に手を当てて、ほくそ笑む。前世では到底あり得なかった行動。Aはダンスを誘われただけで断頭台から逃れたような気にもなって気分がいい。一曲付き合ってあげてもいいが、そうなるとパートナーのひとらんに許可を取らなければならない。
隣にいるひとらんは何と言うだろうかとそちらを向けば、彼はぽかんと開いた口を閉さずにAを見ていた。
「あの、ひとらん様…?」
「…ストラスブール…」
彼の呟いたものは自身の姓であった。Aは以前の彼とのやり取りを思い出して、彼の表情の意味を悟る。
「トントン、少し待っていただいても良いかしら」
「もちろんや」
彼は一度立ち上がってそんな二人のやり取りを見ている。
「まだ、君に相応しいとは到底言えないけどこのまま半疑な気持ちで居るのもよくないな。君の名前を教えてもらっても?」
「相応しくないだなんて思ったことありません。ひとらん様は十分魅力的なお方ですわ。……お応えします。わたくし、ストラスブール第一皇女のA・ラ・ストラスブールと申します。」
Aはドレスの裾を持ち上げ、ひとらんは胸に手を当て互いに頭を下げる。同時に顔を上げて、二人の視線は交わる。
「なんやこれ」
それを見ていたコネシマは面白くなさそうに声を出して、トントンもまたひとらんへAが熱視線を向けるのが少しだけ気に食わなかった。
波乱の歓迎パーティーはこうして幕を下ろすのであった。
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枕の怨念ぅ - 凄く親近感の湧く小説でした!面白いです! (11月18日 16時) (レス) @page5 id: 7f1a8024d0 (このIDを非表示/違反報告)
くれぴと - 夢主様考えることが言い方悪いけど欲望に忠実すぎて逆に幼子みたいで少し可愛らしいと感じる自分がいる...これうちだけかな? (5月7日 20時) (レス) id: e2b452ca9a (このIDを非表示/違反報告)
春風駘蕩(プロフ) - コーネコネコーネは笑う⋯めっちゃニヤついてしまった⋯ (2022年9月17日 23時) (レス) @page14 id: 34351208ff (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - knさん…名前めっちゃコネるやん…不覚にもねるねるねーるねを思い出してしまった…。すみません…。 (2020年12月11日 5時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - こすずめさん» コメントありがとうございます…!一応チラッとだけ概要に書いているのですが、バチコリと読んでおります!元ネタは某なろう系のものです!お褒めの言葉並びに応援のお言葉をありがとうございました…!本当に励みになっております! (2020年9月14日 2時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
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