美しいと称賛すること ページ17
「A様。A様の歓迎パーティーでのパートナーは一体どのような殿方でありますの?」
授業が終わればすぐにこれだ。Aは愛想のいい笑みを浮かべまたまま固まる。勢いでグルッペンとコネシマを振ったまでは良かったものの、それからと言うもの、ノルベルト学園ではストラスブールの姫君のパートナーの話題で持ちきりだったのだ。
Aは付けた笑顔が剥がれ落ちる前に「うふふ。それは当日の楽しみですわ」と誤魔化して、瞬時に教室を後にした。
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「ど、どうしたらいいの…!」
人の目が気になって仕方がないAは、庭園の茂みに隠れて頭を抱える。どこへ居たってAのことを好奇の目で見てくる生徒達にぶっちゃけたところびびり散らしていた。
乱れた言葉遣いでぶつくさと呟きながら打開策を考えていたA。そんな彼女に突然雨が降ってきた。それも特大スコールだ。
「きゃあ…!」
「……え、」
雨から逃れるように茂みから飛び出す。しかしそこを飛び出せば雨は一瞬で止んだ。ビショビショとなった顔を拭って空を見上げれば、空は一面の青である。
「ごめん、人が居たの全然気がつかなかった」
茫然と立ち尽くすAに、声がかけられる。その声は澄んだ山のように落ち着いたテノール。流れる水滴を拭かぬままAはその声の方を向く。
自分より頭一つ背の高い男がそこに立っていた。形違いの制服を身につけたその男は、シャツを腕まくりしている。白いシャツから見えるその肌はAとは縁のないバター色だ。そして彼女にとって一番意外であったのは、太陽の光を一身に浴びてもなお、色が変化することのない黒色の髪とその
ストラスブールだけでなく、その周辺国家でも見ることはない色に少なからずAは魅入る。
「あの、大丈夫? これで良かったら拭いて」
オニキスはAの手にタオルを預けた。
「変わった色ですわね」
「え、このタオルのこと?まあ、たしかにこのタオルは俺の国で藍染したものだけど…」
「違いますわ。あなたのことです」
藍染された薄くて肌馴染みのいいタオルを受け取り、Aは体を拭いていく。
「俺の、色が変わってるって…何が言がたいわけ」
「サファイア、ルビー、ペリドット……その中であなたのオニキスは初めて見ましたわ。美しい色ですのね」
Aは美しいもの、特に宝石が好きだ。だから濡らされたことを怒るよりも美しい宝石を褒めることの方が先であった。
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枕の怨念ぅ - 凄く親近感の湧く小説でした!面白いです! (11月18日 16時) (レス) @page5 id: 7f1a8024d0 (このIDを非表示/違反報告)
くれぴと - 夢主様考えることが言い方悪いけど欲望に忠実すぎて逆に幼子みたいで少し可愛らしいと感じる自分がいる...これうちだけかな? (5月7日 20時) (レス) id: e2b452ca9a (このIDを非表示/違反報告)
春風駘蕩(プロフ) - コーネコネコーネは笑う⋯めっちゃニヤついてしまった⋯ (2022年9月17日 23時) (レス) @page14 id: 34351208ff (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - knさん…名前めっちゃコネるやん…不覚にもねるねるねーるねを思い出してしまった…。すみません…。 (2020年12月11日 5時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - こすずめさん» コメントありがとうございます…!一応チラッとだけ概要に書いているのですが、バチコリと読んでおります!元ネタは某なろう系のものです!お褒めの言葉並びに応援のお言葉をありがとうございました…!本当に励みになっております! (2020年9月14日 2時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
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