ベニトアイトは笑う ページ13
Aは周りの女子生徒の声に耳を傾ける。
「はぁ…何度見てもお美しいわね…」
「えぇ。グルッペン様もだけどその隣の……様もまた美しいわ…」
「お二人のダンスパーティーのパートナーは決まったのかしら?」
「あのような方々のパートナーになれたら光栄ですわね」
きゃっきゃうふふと桃色が飛び交う。そんな中、一人どんよりとしたオーラを出すのはもちろんAだ。関わりたくないという顔を表に出して、すぐに中庭から目を背ける。
「きゃあ!見て、グルッペン様がこちらに来るわ」
「ほ、本当に誰かをダンスパーティーに誘うつもりですの?」
Aが廊下を通り抜けようとしたその瞬間、女子生徒が再度騒ぎ出し、その道を塞がれる。だからAは気付くことなかった。スピネルが自身を見つめていることに、なんて。
いつの間にやらギャラリーは増えており、体の小さいAはなんとかこの場を離れようと必死に流れとは反対に歩を進める。だが恋する乙女は強かった。それはもう戦場に立つ騎士のように頑丈であったのだ。
「お困りのようだな」
耳を溶かすようなバリトンボイスがAの前に降りかかる。人と人の間に挟まれたAへ、手を差し伸べていたのは、彼女にとっての憎き敵…グルッペンであった。
「………へ、」
間抜けな声を出すAを見てスピネルが細くなる。三日月様になったその瞳はどこから見ても愉しそうだ。
「ゼネバス帝国のグルッペン・フューラーだ。君に用がある。ついて来てくれるな?」
有無を言わさず、彼はAの手を引く。あれほどAが出るのに苦労した人混みは今や二人を避けるように広がっており、簡単にAは廊下から陽の差す中庭へと連れ去られた。
「あ、の、…グルッペン、さま…?」
人工的な光ではなく、自然の陽に当てられた男は美しい。悪いところなんて一つも見つからないその顔は、彫刻のようであった。彼はそんなAの熱視線を当然のように受け止めて、先ほどまでいた噴水の前で手を離す。
「ふーん。お前がストラスブールの姫君なんやな」
グルッペンがAへの声かけに答えるよりも先に、噴水の前に腰掛けたベニトアイトが笑う。Aが彼を見やると、こちらを見定めるような瞳が向けられる。知的さに満ち溢れ、そのブルーから放たれる輝きは、眩しいほど華やかでどこか神聖ささえ感じる。
──めちゃめちゃタイプですわ…!
Aは顔色一つ変えずにベニトアイトを凝視していた。
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枕の怨念ぅ - 凄く親近感の湧く小説でした!面白いです! (11月18日 16時) (レス) @page5 id: 7f1a8024d0 (このIDを非表示/違反報告)
くれぴと - 夢主様考えることが言い方悪いけど欲望に忠実すぎて逆に幼子みたいで少し可愛らしいと感じる自分がいる...これうちだけかな? (2023年5月7日 20時) (レス) id: e2b452ca9a (このIDを非表示/違反報告)
春風駘蕩(プロフ) - コーネコネコーネは笑う⋯めっちゃニヤついてしまった⋯ (2022年9月17日 23時) (レス) @page14 id: 34351208ff (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - knさん…名前めっちゃコネるやん…不覚にもねるねるねーるねを思い出してしまった…。すみません…。 (2020年12月11日 5時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - こすずめさん» コメントありがとうございます…!一応チラッとだけ概要に書いているのですが、バチコリと読んでおります!元ネタは某なろう系のものです!お褒めの言葉並びに応援のお言葉をありがとうございました…!本当に励みになっております! (2020年9月14日 2時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
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