【d!】断頭台で首を斬られたのでもう一度人生やり直します

睡眠は美の秘訣 ページ12

「んん…本の内容が変わっていますの…？」

　Aはエーミールに夜の挨拶を済ませて一人自室に篭っていた。もちろん理由は、無駄に長ったらしい呪い書を読む為である。

　今までは問答無用に処刑されていたAであるが、今回は結末こそ一緒ではあるが過程が少しだけ変わっていたのだ。

「…辺境シュヴァイン家に匿われた…？そんな、ことあり得ますの…？」

　にわかには信じ難い話に首を傾げる。何度読んでもその記述は変わらない。匿われたのは数週間。

しかし結局最後は、怒れる民の為にトントン・シュヴァインは泣きながら、A・ラ・ストラスブールを処刑台送りにすると書かれている。

　一体何がどうなってこうなったのかは分からない。Aは考えて、考えて、やがて……寝た。

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「おはようございます。A様」
「おはよう、エーミール」
「今日からいよいよ授業が開始されますね」
「えぇ。わたくしにとっても、あなたにとってもとても有意義なものになると思うわ」

　エーミール特製のハムエッグを口にしてAは笑う。エーミールもまたそんな彼女を見て微笑んでいる。

「行きましょうか」
「えぇ。」

　朝食を食べ終えたAをエーミールがエスコートする。Aは出された手を恥ずかしげもなく受け取った。

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　Aにとって二度目となる学園の授業。Aは完全に舐め切っていた。理由は簡単。一度受けたものであれば自分が覚えていると信じ切っていたのだ。しかし現実はどうだ。……22年でこの世を去ったA。学園を卒業して無念にも4年の歳月が経っていた。時は残酷。……完全に学んだもの、すべてを忘れてしまったのだ…。

「………呪文か何かかしら…」

　同じ授業を受けたのにも関わらずエーミールの肌は艶々としている。対してAはどんよりと肌自体は真っ白なのに黒ずんでいるようにも見えた。

ぶつぶつと授業に対して文句を言うAであったが歓声の声が耳に入り、やっと顔を上げる。そこには数名の女子生徒が中庭を見て、うっとりと顔を緩ませていた。視線の先に何があるのか、とミーハーなAは気になって低い背を懸命に伸ばして見やる。

───グルッペン・フューラー！！！

　そして後悔する。そこには噴水前に腰をかけたグルッペン・フューラーと、やけに顔がいい人物が並んで話していたのだから。

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