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「そういえば、梨花たちと合流しなくていいの?」
私は緑間くんに尋ねる。まだ気持ちは隠しきれないから、別の話題を持ちかけたのだ。
「む……今から連絡して見るのだよ」
私の質問に緑間くんはそう言って、携帯を取り出し、高尾くんに電話をかけた。
(2人と合流すれば、なんとか気持ちは誤魔化せるかな……)
私は軽くそう考えていた。
「……分かったのだよ」
緑間くんが高尾くんとの電話を終える。
「それで、2人はどこにいるって?」
私が梨花と高尾くんの居場所を尋ねると、「梨花と高尾は、2人で花火を見て帰るそうなのだよ」と返される。
「え……」
いや、ちょっと待って?緑間くんと2人きり……?
先ほど封印すると決めた〈想い〉が、私の中を掻き乱す。
「橋本はどうするのだよ」
「え?」
頭がぐちゃぐちゃになっていたときに、緑間くんに質問されて、変なふうに答えてしまう。
「花火を見て帰るのか、このまま帰るのか、どちらにするのだよ」
「ああ、そういうこと。うーん……花火が近くで見えるとこまではもう遠いし、正直人混みが好きじゃないからもう帰ろうかな……。緑間くんは?」
緑間くんが分かりやすく2択で尋ねてくれたため、答えられた。
彼に述べた理由は事実だけど、本当はそれよりも、早く1人になりたいという気持ちの方が大きかった。緑間くんには残ってもらいたいな、なんて思いつつ質問した。
「ならば俺も橋本と一緒に帰るのだよ。家まで送る」
私の気持ちとは、完全に裏腹な答えが返ってきた。
「え、わざわざ送ってくれなくてもいいって」
私は全力で遠慮する。
「1人で夜道を歩くのは危ないのだよ。それにお前はここに明るくないだろう。余計に危険なのだよ」
いつの日かと似ていて、緑間くんはなかなか譲らない。
「別に大丈夫だって。じゃあね」
私は説得するのを諦めて、彼を無視して歩き出すが、彼の左手が私の右手首を掴んできて、それを阻む。
「だから……!」
大丈夫だって、と反論しようとしたが、
「先ほどまでのことを、お前はもう忘れたのか?」
と耳元で忠告されて、怯んでしまった。と同時に、少し身体が震えた。まだ、あの感触が消えていない。
「……分かったのなら、大人しく俺と帰るのだよ」
「……うん」
私はようやく自覚して、緑間くんに従ったのだった。
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ゆう(プロフ) - めちゃくちゃ大好きな作品です…、嫌い者同士がいつの間にかお互いを意識し出すという私の性癖にぶっ刺さりの作品でした…。終わってしまったのが悲しいぐらい作者さんの緑間が大好きでした。素敵な作品をありがとうございました (11月9日 8時) (レス) id: da835a1297 (このIDを非表示/違反報告)
いちご大福(プロフ) - 緑間よ、早よ告れ。そして鈍感にも程があるぞ。 (2022年6月11日 15時) (レス) @page35 id: a070048203 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年5月25日 11時