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「俺が聞きたいのは、お前が俺の何に気がついているか、なのだよ」
『もういい加減気づいたらどースか』
先ほど黄瀬に言われた言葉を、三度思い出す。
『何にって……もしかして、本当にまだ気づいてないんスか?!』
「だからお前に聞いているのだよ!」
そのためにわざわざ電話をしているというのに、何なのだよこの男は!
『はぁー、仕方ないっスねー』
ようやく答えが分かる、そう思い息を呑む。
『Aっちが俺と話してた時、緑間っちはどう思ったんスか?なんでAっちに、ラッキーアイテム渡したいって思ってるんスか?緑間っちは、Aっちと一緒にいると、どんな気持ちになるんスか?』
と、畳み掛けてくる黄瀬。俺は一つ一つ丁寧に応えた。
「お前が橋本と話していたのを見た時、無性に腹が立ったのだよ。橋本にラッキーアイテムを渡すのは、最近、気がつけば橋本のことを考えることが多くなったからなのだよ。橋本と一緒にいると……少しだけ胸が軽くなる。以前までは、視界に入ると不愉快になっていたが、今では何ともなく、むしろ視線を送ることが増えたのだよ」
『じゃあもう答えは出るっスよ!』
「だから、俺がこうなる原因が分からなくて、お前に電話してるのだよ!」
『うわー俺、緑間っちがそこまで鈍いと思わなかったっス……』
電話の向こうから聞こえてくる声は、呆れ返っている様子だ。そして、長い長いため息のあと、ようやく黄瀬は俺に答えを言った。
『緑間っちは、Aっちのこと、好きなんスよ』
その言葉を聞き、俺はかつてない衝撃を受けた。
(俺が橋本のことが好きだと?ありえないのだよ)
そして、そのまましばらく黙っていた。すると、黄瀬はそんな俺に飽き飽きしたようで、『もう俺、電話切るっスよ』と言い残し、通話を終えた。しかし、俺はまだ携帯を耳に当てたまま考えていた。
橋本に恋愛感情を抱いていることに、ずっと自覚していなかった俺は、黄瀬から言われても、橋本のことを考えてもなお、信じられなかったのだ。
ありえない。絶対にありえない。あれほどまでに嫌っていたではないか。俺も、橋本も……。
チクリ。
(っ?!)
胸が痛む。なぜだ。
「……」
1人で悩んでいても、またこうして時間だけが過ぎていく。
(一度、橋本本人と話してみたら、何か分かるかもしれない)
俺はそう思い、彼女に電話をかけることにした。
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ゆう(プロフ) - めちゃくちゃ大好きな作品です…、嫌い者同士がいつの間にかお互いを意識し出すという私の性癖にぶっ刺さりの作品でした…。終わってしまったのが悲しいぐらい作者さんの緑間が大好きでした。素敵な作品をありがとうございました (11月9日 8時) (レス) id: da835a1297 (このIDを非表示/違反報告)
いちご大福(プロフ) - 緑間よ、早よ告れ。そして鈍感にも程があるぞ。 (2022年6月11日 15時) (レス) @page35 id: a070048203 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年5月25日 11時