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橋本を家まで見送り、自分もようやく帰宅する。
夕飯を済ませ、テスト勉強のために机に向かうが、
全く集中できず、机の上の問題集たちは蝶々のように羽を広げているだけだった。蝶は休むとき、羽根を閉じるが、贅沢にもこの蝶は羽根を広げたまま休んでいた。
(くそっ……)
問題が、解けない。
……ふと、さっき黄瀬が言っていたことを思い出す。
『いい加減気づいたらどースか』
(やつが気づいていて、俺が気づいていないことなど……)
あるはずない。そう思いたかった。そこまで鈍い方ではないと自負しているからだ。
(しかし……)
現に俺は今、解けない問題があるではないか。
なぜあれほど嫌いだった橋本のことを、よく考えるようになったのか。橋本が俺以外の男と話していると、俺が知らない話題について話していると面白くないのか。
モヤモヤしたままでは、テスト勉強に身が入らない。そう思い、俺はまず、この疑問の答えを知っているであろう黄瀬に連絡することにした。
『もしもし、緑間っち?』
「……もしもしなのだよ」
『急に俺に電話してくるなんてどうしたんスか?勉強しすぎて頭おかしくなったんスか?」
まったく……いつもどこか癇(かん)に触る男なのだよ。
「おかしくなっていないのだよ!ただ、少し気になることがあるのだよ……」
『気になること……?あー!もしかしてAっちのことスか?』
「……何故分かったのだよ」
まるで俺の心を読んでいるかのように橋本の名を口にする黄瀬。
『えー?だってさっき俺がAっちと話してたところ見た緑間っち、チョー機嫌悪そうだったっスもん!俺ほんのちょっとビビったんスからね!』
それを聞き、俺があの時どれだけ殺気立っていたのかを知る。橋本が少しだけ固まっていたのもそのせいだったのだろうか。
『そんで、緑間っちは俺に何が聞きたいんスか?』
つい先ほどまでのおちゃらけた声音でなく、真剣なトーンになったことから、俺の真(しん)をつこうとしてきているのが分かった。
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ゆう(プロフ) - めちゃくちゃ大好きな作品です…、嫌い者同士がいつの間にかお互いを意識し出すという私の性癖にぶっ刺さりの作品でした…。終わってしまったのが悲しいぐらい作者さんの緑間が大好きでした。素敵な作品をありがとうございました (11月9日 8時) (レス) id: da835a1297 (このIDを非表示/違反報告)
いちご大福(プロフ) - 緑間よ、早よ告れ。そして鈍感にも程があるぞ。 (2022年6月11日 15時) (レス) @page35 id: a070048203 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年5月25日 11時