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「緑間っち」
「なんなのだよ」
いきなり話に入ってくるなと言わんばかりの圧だ。しかし、黄瀬くんはやはりそんな彼に動じない。
「もういい加減気づいたらどースか」
それどころか挑発していた。
「なんの話なのだよ?」
緑間くんは、本当に訳が分からないという風にしていた。黄瀬くんが何か意味深なことを言っている、ということは分かるのだが、その「意味」がなんなのか見当もつかないため、私も緑間くんと同様に、黄瀬くんの言ったことに、はてなする。
「俺、今日はもう帰るっス!今回だけテストは鉛筆に頼らず頑張ってみるっス!じゃあ緑間っち、Aっち、じゃあねっス!」
しかし、黄瀬くんは緑間くん(と私)の疑問には応えず、とりあえずまだ火のついていない爆弾だけを投下して、颯爽と帰っていってしまったのだった。
黄瀬くんに取り残された私たちは、ただひたすらに沈黙していた。しかし、ずっとそうしている訳にも行かないため、帰宅しようと心に決め、声を発した。
「じゃ、じゃあ私、もう帰るね」
なんとなく緑間くんが見れなくて、言葉だけかけて足早にその場を去ろうとしたのだが、彼の手がそれを許さなかった。
「え……」
私の右腕が、緑間くんの左手に捕まっていたのだ。すると、それは無意識の行動だったのか、緑間くんが驚いたようすで、すぐさま私の手を離した。
でも、私はそれを無視して帰ることが出来ずに立ち止まってしまい、再び私たちの間に気まずい空気が流れる。
しかし今度は、その沈黙を緑間くんが破った。
「……その、暗くて危ないから、家まで送るのだよ」
「……っ」
緑間くんの意外な提案に、思わず息を呑む。喜んでいいのだろうか……。彼を好きな身としては嬉しいのだが、彼はきっと私のことをそういう風に見ていないだろうし、断ろうか。
ふと、夏休みのバスケ部合宿のことを思い出す。あの日も彼は、夜道に女が1人で歩くのは危ないといって、着いてきてくれた。
いや、それよりも今回は、祭りのあの日の方が近い状況かもしれない。あの日も彼は私を家まで送ってくれた。
(やっぱりあまり他意はないのかな……なら)
「じゃあ、お願いします……」
少しわがままになっても、いいよね……。
そして、私は緑間くんと一緒に、家に向かったのだった。
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ゆう(プロフ) - めちゃくちゃ大好きな作品です…、嫌い者同士がいつの間にかお互いを意識し出すという私の性癖にぶっ刺さりの作品でした…。終わってしまったのが悲しいぐらい作者さんの緑間が大好きでした。素敵な作品をありがとうございました (11月9日 8時) (レス) id: da835a1297 (このIDを非表示/違反報告)
いちご大福(プロフ) - 緑間よ、早よ告れ。そして鈍感にも程があるぞ。 (2022年6月11日 15時) (レス) @page35 id: a070048203 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年5月25日 11時