検索窓
今日:1 hit、昨日:26 hit、合計:10,756 hit

117 ページ27

学校に来ると、例のごとく、緑間くんがすでに着席していた。しかし、いつもと違うところが一つだけあった。それは私たち2人以外、この教室にいないということだ。

(いつもは誰かしら数人はいるのに……)

緑間くんの気持ちが分からず不安であるし、単純な好きな人と2人きりという状況に緊張したが、教室に来たのにいつまでも席に座らないのは不自然だと思い、意を決して彼の隣に着席する。

「おはようなのだよ」

静かな教室に、彼の少し低く芯のある声が響く。

「おはよう」

私は跳ねる心臓を誤魔化すように、端的に挨拶を返す。これはいつも通りだから、変に思われてないはず。
と、心の中でこっそりあたふたしながらも、ちゃちゃっとリュックから教科書やノートを取り出して、机の中に入れ終える。

すると、終わるタイミングを見計らったかのように、緑間くんが私の机上にそっと、若草色のクローバーが書かれた封筒を置いてきた。
私が不思議に思って問う間もなく、彼はこう言った。

「今日の魚座のラッキーアイテムは、手紙なのだよ」

「あ、ああ、そういえば、梨花になんか書いてって頼まれた気が……もしかして緑間くん、書いてきてくれたの?」

ラッキーアイテムに関しては、わざと少しとぼけた風に言う。でも、彼が手紙を書いてきたという事実は普通に意外だったため、それに関して問う。

しかし、緑間くんは私の質問に否定も肯定もせず、
ただ「受け取るのだよ」とだけ言いやったのだった。

実のところ、めちゃくちゃドキドキしてるし、嬉しい。

あと、普通に手紙をもらうのは好きなのだ。メールだとかは手軽だけれど、やはり情にかけると思う。その点、手紙は筆者の気持ちが率直に伝わるから、メッセージを受け取ったときの嬉しさが段違いだ。

封筒がビリビリにならないように、シール留めをゆっくり丁寧に剥がすと、中からは端と端が寸分も違わず、綺麗に半分に折られた便箋が出てきた。まったく几帳面な彼らしい便箋に、少し頬が緩む。

手紙に書かれた彼の字は洗練されており、とても流麗なさまであった。内容としては、私の体調や運勢(これはちょっとよく分からない)を心配するもので、彼の心遣いが沁みた手紙だった。

「その、ありがとう……」

私は火照った顔を隠すように、彼を見ずにそう言って、彼の手紙を優しくリュックにしまった。

118→←116



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (20 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
33人がお気に入り
設定タグ:黒バス , 緑間真太郎 , キセキの世代   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ゆう(プロフ) - めちゃくちゃ大好きな作品です…、嫌い者同士がいつの間にかお互いを意識し出すという私の性癖にぶっ刺さりの作品でした…。終わってしまったのが悲しいぐらい作者さんの緑間が大好きでした。素敵な作品をありがとうございました (11月9日 8時) (レス) id: da835a1297 (このIDを非表示/違反報告)
いちご大福(プロフ) - 緑間よ、早よ告れ。そして鈍感にも程があるぞ。 (2022年6月11日 15時) (レス) @page35 id: a070048203 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年5月25日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。