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「緑間くん、痛い」
俺に引っ張られている橋本が、痛いと訴えてきた。どうやら引っ張る力が強かったらしい。
「っ、すまないのだよ」
俺は慌てて手を離し、謝る。すると、橋本がなんか怒ってる?、と俺に聞いてきた。
「怒ってはないのだよ」
が、苛立っていた。
高尾と橋本が、俺の知らない事を話しているのがなんとなく嫌だったからだ。
俺の返答が気に食わなかったのか、橋本は困り眉になって首を傾げていたが、それ以上は俺に聞いてこなかった。
俺はどういうわけか、それにも苛つき、橋本に尋ねる。
「……高尾となんの話をしていたのだよ」
キョトンとする橋本。しかし、なんのことかわかったのか「ああ」と言ってから説明した。
「昨日、高尾くんに連絡先を教えてもらったからそのお礼をしたの」
そう答えると橋本は、1人で教室まで向かい出した。俺は彼女に追いつくように、大股で歩みを進めた。
「誰の連絡先なのだよ」
すぐに追いつき、橋本の横に並んで質問した。
「高尾くんから聞いてないの?」
「.…知らないのだよ」
聞いていないから質問しているのだよ!と思ったが、例のごとく喧嘩に発展してしまうと思い、口をつぐむ。すると、彼女から意外な人物の名前が出てきた。
「黄瀬くんだよ」
その名前を聞いて、なぜか冷や汗をかいた。
「黄瀬……?なぜなのだよ」
理由を、知りたい。早く。自分でも不思議だった。
俺たちは会話しつつも教室へ入って着席し、もう授業の準備も終えていた。本鈴がなるまでの時間は残りわずか。
理由を早く知りたいのは、授業中に橋本のことを気にしたくないからなのかもしれない……。
「なぜって……なんで?」
だが、橋本は俺の意に反して、俺が理由を知りたがっている理由を尋ねてきた。
「……俺に言えない理由でもあるのか?」
思わず俺はそう返していた。しかし、橋本はそれには大きく反応せず、普通に答えてくれた。
「別にそうじゃないけど。この前のお礼が言いたかっただけだよ」
俺は、橋本が言う〈この前〉とは、祭りで黄瀬が橋本を助けたときのことだと理解した。
「そ、そうか……」
思わずホッとしてため息をつく。
「?」
橋本はそんな俺を不思議そうに見つめてきたが、正直俺自身、なぜ自分が安心したのかは分かっていなかった。
気になっていたことを聞いてモヤモヤが解消されたはずなのに、俺は授業中、なぜか橋本のことばかり考えていた。
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ゆう(プロフ) - めちゃくちゃ大好きな作品です…、嫌い者同士がいつの間にかお互いを意識し出すという私の性癖にぶっ刺さりの作品でした…。終わってしまったのが悲しいぐらい作者さんの緑間が大好きでした。素敵な作品をありがとうございました (11月9日 8時) (レス) id: da835a1297 (このIDを非表示/違反報告)
いちご大福(プロフ) - 緑間よ、早よ告れ。そして鈍感にも程があるぞ。 (2022年6月11日 15時) (レス) @page35 id: a070048203 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年5月25日 11時