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片付けも着替えも終わり、体育館の外で待っていると、鈴木くんが慌ててやってくる。
「お待たせ!」
「ううん、全然大丈夫!」
少し申し訳なさそうに言った彼に、私はそう返す。
「梨花ちゃんと会えてほんとによかった!」
「そう?ありがとう」
本音なのか、鈴木くんは声のボリュームが上がり、私と距離を近づけた。
「いやー、この前、間違えちゃったからさ……」
鈴木くんがそんなことを言い出した。
「ん?なにを?」
この前?間違えた?なんの話だろう。
「夏に合宿で海の方に行ったときに、コンビニで梨花ちゃんのお姉ちゃんに会ったんだよ」
「お姉ちゃんに?」
初耳だった。合宿の日から今日まで、お姉ちゃんからは鈴木くんの話なんて聞いていないし、名前も出てこなかった。
「そう。だから焦っちゃってさー」
「なんで?」
「え、なんかあの子と梨花ちゃんを間違えるとか、恥ずかしくない?」
鈴木くんは突然そんなことを言い出した。
「どういうこと?」
「だって、梨花ちゃんと違ってあの子、暗いじゃん!」
そこで、私はようやく違和感を覚えた。
私と違って……なぜ姉であるお姉ちゃんではなく、私が基準なのだろう?
それに、「あの子」だとか、私の「お姉ちゃん」だとか言って、なんでお姉ちゃんの名前で呼んであげないのだろう?
私はそれまで普通に彼の話を聞いていたが、さすがに疑問が浮かぶ。
「梨花ちゃんの方が普通に好きだし!」
鈴木くんは笑顔でそう言った。
好き。中学の頃言われてたら、すごく喜んでいたかもしれない。だけど、今は違う。
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ゆう(プロフ) - めちゃくちゃ大好きな作品です…、嫌い者同士がいつの間にかお互いを意識し出すという私の性癖にぶっ刺さりの作品でした…。終わってしまったのが悲しいぐらい作者さんの緑間が大好きでした。素敵な作品をありがとうございました (11月9日 8時) (レス) id: da835a1297 (このIDを非表示/違反報告)
いちご大福(プロフ) - 緑間よ、早よ告れ。そして鈍感にも程があるぞ。 (2022年6月11日 15時) (レス) @page35 id: a070048203 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年5月25日 11時