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合宿2日目の夕飯時、橋本Aの笑いについて、話題になった。俺は〈あの日〉のことを思い出していた。
『……ははっ、よくここが分かったね、緑間くん』
地学準備室に閉じ込められていた橋本を助けたときだった。俺の姿を見て、そう言ったヤツの顔は確かに笑っていた。
ヤツの笑顔は、不思議なものを感じさせた。普段は見れない物珍しさゆえなのかもしれないが、あの時の表情は状況と相まってか、不気味なほど美しかった。
こんなことを思っていると知られると、高尾がうるさくなりそうだったため、俺はヤツの笑顔をいつ見たかについてはコメントしなかった。それに、事件のことを掘り起こして、変に橋本を刺激する必要もないのだよ。
ちなみにあの日以来、橋本の笑っているところは見ていない。
だが先ほどまでの話を聞いたかぎり、別に笑いを我慢したり抑えたりしているという感じではないらしい。単純に笑いにおける表情の変化が少ないのかもしれない。
「ねえ、それでいうとさ！私、緑間くんが笑ってるとこ、あんまり見ないんだけど」
橋本梨花が便乗してそう言う。
「俺も普通に笑うのだよ」
俺はキッパリと答えた。
「あーたしかに。真ちゃん、いつもこーんな顔してるもんな！」
俺の台詞を無視して、両手を眉の端にやり、眉を吊り上げるフリをしながらそう言う高尾。
「そんな顔はしていないのだよ！」
こいつの奔放さには、腹が立つ。
「緑間くんは結構笑うでしょ」
「え！？」
「え〜うっそー？」
意外な人物、橋本Aがそう言う。橋本梨花と高尾がそれを聞いて驚く。
「結構笑ってるよ。……おは朝占いのこと語ってる時とか。あの自慢げな笑顔、毎回腹立つんだけど」
そう供述する橋本Aは、後半に連れて声が低くなっていった。こいつも高尾と比べ物にならないほど、失礼なやつなのだよ。
「……お前はいつも一言多いのだよ」
腹が立ちそう返すが、
「あー分かるかも！」
「たしかに、真ちゃん、おは朝占いのこという時、めっちゃニヤニヤしてるわ」
橋本梨花と高尾が同意する。
「ニヤニヤなどしていないのだよ！」
俺の雄叫びが、食堂に響いたのであった。
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作者名：ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時：2022年5月10日 16時
