44 ページ44
「梨花ちゃん、なんかマネージャーたちのはこっちらしいよ」
味覚を揶揄われ、そんなはずないです!とぷんぷんしてる梨花ちゃんに、俺は声をかける。すると俺の声にすぐ反応してこちらへ来た。
梨花ちゃんはメモを見て「マネージャー用……?」とすごく首を傾げた。そしてすこし不安な表情をしたまま、マネージャー用のおにぎりを食べた。
「ん!こっちの方が美味しい!」
俺たちの食べていたおにぎりを食べた時とは違う反応をする梨花ちゃん。
「え〜どれどれ?」
「あっ!」
俺は梨花ちゃんの右手首を掴んで引き寄せ、彼女の持っていたおにぎりを口に運ぶ。
「……そう?こっちのが味薄くね?」
梨花ちゃんが言うほど美味しくなかった。俺たちの食ってる方が絶対美味い。
「そんなことないよ!丁度いいよ!」
譲らない梨花ちゃん。
すると、監督がやってきて「なるほど。そういうことか」と言った。
「そういうことってどういうことっすか?監督」
俺がそう聞くと、監督が俺たちに説明した。
部員たちは練習で汗をたくさんかいて、塩分が足りなくなり、味覚もおかしくなる。だから俺たち用のおにぎりには塩を多めに入れてある。一方、部員たちほど汗はかいていないマネージャーと監督用は、塩の量は普通にしてある、みたいな感じだった。
「なかなか気の利くやつだな」
監督はそう呟いておにぎりを食べた。その話を聞いていた大坪先輩、宮地先輩、木村先輩も感心する。
「Aちゃん、ちゃんと考えてくれてんだな、真ちゃん」
俺は、少し離れたところでAちゃんのおにぎりを黙って食べる真ちゃんに、ちょっかいを入れる。
「いきなりなんなのだよ高尾。……確かに、ありがたいことにはありがたいのだよ」
眼鏡をクイっとしながら、俺から目を逸らしてそういう真ちゃん。
(まったく、ツンデレだなぁ〜)
俺はそんな真ちゃんを見て、ニヤニヤしながら揶揄ったのだった。
31人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年4月22日 14時