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「はぁ……助かるのかな」
無駄だとわかっていながらもすることがないため、独り言を呟く。助かるのは本当にキセキだと思う。
「キセキ……ね」
ふとある人のことを思い出す。
(たしか緑間くんは、キセキの世代とか言われてるんだっけ)
バスケのことは全く分からないが、梨花からたまに彼の凄さは聞いていた。
「ハハッ……」
乾いた笑いがこぼれる。こんな状況で彼のことを思い出すなんて暑さで頭がやられたのだろうか。
しかし言霊というものがあるのだろうか。次の瞬間、聞こえるはずのない人の声が聞こえた。
「橋本、そこにいるのか？！」
「え？……緑間くん？」
ついに幻聴まで聞こえて来るようになってしまったのか、と自分に呆れる。
「今すぐ開ける。ドアから離れるのだよ」
彼の言葉がはっきり聞こえる。夢かもしれない、そう思いつつも四つん這いで私はドアから距離を取った。
その直後、すごい音を立てて扉が倒れて来た。
(開けるというより破壊じゃん)
びっくりしつつも入口を見つめていると、高身長の彼の姿が目に入る。思わず目を見開きながら見上げる。
「……ははっ、よくここが分かったね、緑間くん」
私は笑いながらそういう。
「橋本……笑い事じゃないのだよ」
彼は少し怒っていた。でも、なんでだろう。いつもより怖くない。
「確かに」
「立て。さっさと保健室に行くのだよ」
緑間くんが右手を差し伸べてくれる。いつもなら振り払うけど、この手に頼らなければいけない気がして、左手で彼の手を掴んで立ち上がる。
「ありがとう。……っうわ！」
だが、思っていたよりも体は弱ってたらしく、大きく立ちくらみを起こす。しかし、体が地面にぶつかった衝撃はなく、浮き上がっている心地がした。
瞼を開くと、目の前に緑間くんの胸板が広がっていた。思っていたよりも至近距離で少しだけ胸が弾む。また、私の背中が彼の逞しい左腕に支えられているのがわかった。
「全く……」
緑間くんは完全に呆れていた。
「ごめん。立ちくらみしちゃって……」
申し訳ない気持ちもあったが、汗だくの体に触れられ、ちょっと恥ずかしい気持ちもあった。再び弱みを見せてしまったという悔しさも少々。なんて考えるけど、筋肉が硬直しているのか体に力が入らない。
すると、緑間くんはそれを察したのか、私の体が突然浮き上がる。
「えっ……」
「喋るな。保健室に着くまで辛抱するのだよ」
彼はそう言って歩き出す。
(これ、お姫様抱っこってやつ……？)
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作者名：ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時：2022年4月22日 14時
