16 ページ16
「最悪だ……1番見られたくない相手に、泣いてるところ見られた……」
私は保健室のベッドの布団にうずくまり、先程の失態を嘆いていた。
(もうHR終わったくらいかな)
件(くだん)からはまだそれほど時間は経っておらず、1時間目の始業のチャイムは、まだ鳴っていない。
(なんか、変な感じ……)
こんな理由で授業をサボろうと思ったことは、一度もなかった。むしろ、何がなんでも休まないという鋼の意志で授業に臨んでいた。それが、学校で涙を流した(しかも嫌いな人の前)だけでこの有様である。
(今なら、まだ……)
1限に間に合うかもしれない。少しだけマシになった情緒で、自分を奮い立たせ、教室へ戻ろうと、ベッドを出ようと動き出す。するといきなり、ベッドを囲むカーテンが開いた。しかも、思わぬ人物がそこにいた。
「緑間くん、なんで……」
私は思わず固まってしまった。自分をうまく取り繕える自信がないからだ。そのため、黙って彼の顔を見つめながら、彼が話し出すのを待った。すると、彼はこれでもかと眉間にシワを寄せ、こう切った。
「本当にお前とは、つくづく気が合わないのだよ」
「え?なにいきなり」
唐突過ぎて、彼が嫌いな人物であるということを一瞬忘れかける。
「お前の好きな食べ物は」
「な、納豆」
「なぜだ。理由は」
「えっと、栄養価が高いし、独特なにおいにそそられるから……?」
訳のわからないまま、緑間くんの質問に答えると、これまた訳のわからないことが返ってきた。
「俺の嫌いな食べ物は、納豆なのだよ」
「は?」
「理由は、においが臭いからなのだよ」
「はあ」
緑間くんの質問はまだ続いた。
31人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年4月22日 14時