死人に口なし【HQホラー】

episode 06 ページ7

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「じゃあ今から俺達が宿泊する家行くぞー。勝手にフラフラどっか行って迷うなよ。こんな山奥で遭難、なんてシャレにならねぇからな」
「もし遭難者が出たら入翔の出番ですね」
「えっ、私ですか!?」


烏養さんの注意喚起に、澤村さんがわざわざ私の名前を挙げてそんな事を言った。なんで私なんだろう、と不思議に思うが、烏野面々は大きく頷いており、まるで澤村さんの言葉に同意しているみたい。

どうやら他校の人達も疑問に思ったらしい。白鳥沢の天童さんがそのパッチリとした目を、数回瞬きしながら「なんでマネちゃん？」と疑問の声を上げる。
それに対して菅原さんがハハッ、と笑いながら記憶を掘り返すように話す。


「うちの単細胞……んﾞんっ！ 日向が、」
「爽やか君それ隠せてないよ」


及川さんの指摘が飛ぶ。でも菅原さんは爽やか(……？)な笑みを崩さないまま話を続ける。たまに菅原さんって腹黒いんだよな……。


「日向がね、結構高確率で迷うんだよ。ロードワーク中とか他校に練習試合に行った時とか。でもそういう時に入翔に探しに行かせると、いつもすぐに見つかるんだよ。

それ以外にも道が分からなくなった時とかに入翔の勘に頼って歩いたりすると目的地に着いたりさ。マジでいつもお世話になってます」


スっと軽く頭を下げてきた菅原さん。慌てて私も「いえそんな……！」と、頭を下げ返す。
──確かに菅原さんが言った通り、男バレのマネージャーになってからというもの日向君が迷子になるのが日常茶飯事で、その捜索に出歩く内に、探している人に出くわしやすくなったり、道に迷っても適当に歩いたら行きたい場所に辿り着く、みたいなことが頻繁にあった。

でもだからといってこんな場所にアテにされても、万が一があったら怖いから困る……。
他校の人(主に木兎さんとか及川)達が「何それ凄っ！」と感嘆の声を上げる中、私はいたたまれない気持ちになり下を向く。


「ほらそろそろ行くぞ！ あと入翔が居るから大丈夫、じゃなくて普通に一人ひとりが意識して迷わないようにしろ！ 特に日向！」
「ハイッ！」
「入翔が居るから……？ コーチ、もしかしてそれダジャ」
「スガ、お前は少し黙ろう」


……菅原さんがそのまま言葉を続けていたらこの場に氷河期が訪れていただろう。澤村さんがピシャリッと容赦なく菅原さんの言葉を終わらせた。

顔を上げれば辺り一面が私達を飲み込むかのような大きな森。それが何だか少し、怖くなった。

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