ファンサ ページ36
.
「また星海ーー！！」
私は目の前で繰り広げられるその試合を、呆然と見ていた。コート上で相手のエースの強烈なスパイクをレシーブしたかと思えば、次は攻撃に跳ぶ。身長は170cmに満たないくらい。それでも、星海さんは誰よりも跳んでいた。あの翔陽よりも、もっと高く。
ブロックも高い。隣には星海さんより20cm以上高い選手が居るというのに、その人よりも最高到達点が高いのだ。
味方のフォローも完璧。次の攻撃モーションへの切り替えに無駄がない。
何でもこなし、何でもやれる事で自分のコートに立つ価値をアピールする星海さんのそのプレースタイルには、とてつもなく既視感があった。
「気付いてるか、荒井」
「烏養さん……はい、分かってます」
「アレはまさにーー……“
「いえ、プレースタイルは確かに同じです。でも星海さんは……あの頃の私よりもっと“上手い”です」
静かに隣に現れた烏養さんも、星海さんのプレースタイルがかつての私と同じことに気付いていたらしい。
コートで動き回る星海さんの姿を見るたびに、胸の奥深くをぐちゃぐちゃに掻き乱されるような感覚に襲われる。この気味の悪い感覚は、なんだろう。
ギュッと強く手を握りしめると、爪が手のひらに鋭く食い込む。刺すような痛みが走るが、その痛み以上に、私はコートで活躍する星海さんが鬱陶しく思えていた。バレーボールが上手い人は皆凄いと思うし、憧れるし、選手として好きになってしまう。現に牛島さんもそうだし、烏野の皆もそうだ。
それなのにどうして星海さんには……。
理解不能な感覚。思わず胸の辺りを押さえる。
そのとき丁度、星海さんにサーブの順番が回ってきた。既に興奮が最高潮に達している会場はボールを持つ星海さんに歓声を上げる。
サーブ開始のホイッスルが鳴ったその瞬間、星海さんが明らかにこちら側に視線を向けてきた。2階に、しかも他の選手達も沢山いて分かりにくい筈なのに、星海さんは私と視線が合うなり満足そうに笑みを浮かべる。
そして彼はわざわざ体の向きをこちらに向け、私をビシッと指さし、叫んだ。
「見ろよ!!」
確実に私へと向けられたであろうその言葉。近くにいた女子達が黄色い声を上げる。いっそ彼女達に向けられていて欲しかった。
星海さんのサーブが決まった時でさえ、この気味の悪い感覚は収まらなかった。
「(……生きる伝説にはあんな強烈なサーブ打てないのに)」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1850人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ナノハナ - めっちゃ面白いです！私はこの話の続き、いつまでも待ってます！ (2月18日 21時) (
レス) @page41 id: 137f80559f (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才が天才ですめちゃくちゃ好きです、、お時間ある時にまた更新お願いします！そしてもっとモテモテの荒井ちゃん見たいし欲を言えば全員との落ちなんかも見れたら嬉しいです笑更新楽しみにしてます！ (7月17日 16時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
Wing(プロフ) - 面白くて一気に読んでしまいました。続き楽しみにしてます! (2022年8月25日 16時) (レス) @page41 id: 8c6a1b2baa (このIDを非表示/違反報告)
( ･´ｰ･｀)どやｗ - こんな文才ほしいっ(ﾉД`)ｼｸｼｸ あ、とっても面白かったです！！（汗） 好かれる可愛さ！たしかにかわいいっニコニコしているっ＝天使 変な方程式ｗｗ 返信不要です (2022年7月2日 14時) (レス) @page41 id: 4e2cb1d965 (このIDを非表示/違反報告)
あくもん(プロフ) - うわぁぁぁぁぁ！！！！更新されてる！今回も素晴らしい話でした！これからも更新頑張ってください！いつまでも気長に待ってます！お身体には気をつけてくださいね！ (2022年5月15日 10時) (レス) @page40 id: cfb31e7c1d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
