生きる伝説、烏野に来た。

大王様？ ページ9

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案の定、１セット目の翔陽は本っ当酷かった。明らかに自分のボールじゃないものもレシーブしに行って他の人とぶつかったり、最後の最後には飛雄の後頭部にサーブをぶち込んだ。自らの死を悟って顔面蒼白な翔陽。
だけど飛雄は翔陽にとっとと通常運転に戻りやがれ！と声を荒らげるだけで、翔陽が危惧していた“ベンチに下げられる”ということは無かった。

うん、まあ……翔陽と飛雄の速攻がどれくらい通用するか確かめたいって話だったのにここで翔陽を下げたら意味ないからね。飛雄は最初から何があっても翔陽を下げる気は無かったと思うけどね。
更に、田中さんのザ・先輩な言葉を掛けてもらい、ようやく翔陽は通常運転に戻った。

さすがに今なら声をかけても平気でしょ。


「ねぇ、翔陽」
「あ、A」
「ちょっと翔陽にやってみて貰いたい事があるんだよね！」
「えっ俺に？ 何か分かんないけど、やれるか分からないよ？」
「多分平気！ それに今は練習試合だから失敗しても大丈夫。だから新しい事どんどんやってこうよ！」
「そ、そっか……そうだよな……！」


俺やってみるよ！と意気込んだ翔陽に満足し、私は翔陽の耳元に顔を寄せて、やってみてもらいたいことを彼に伝えた。翔陽は「それなら俺にもできるかもしんない！」と言って少し安心した様子をみせる。
ーーそして、２セット目が始まった。

１度目は失敗するも、２度目からは翔陽と飛雄の速攻がどんどん決まっていき、青城側が混乱していく。途中で翔陽を囮にして他の人達が決めたりと上手く作戦通りにいっている。
私が翔陽に言った“やってもらいたいこと”はまだやれるタイミングがない。

良い流れに乗ったまま２セット目は烏野が取った。３セット目を控えた休憩時間、「向こうに影山みたいなサーブ打ってくるやついなくて良かった…」という菅原さんの言葉に、飛雄が「多分向こうのセッター、正セッターじゃないです」と言い出す。

その言葉に私も「え？」と反応したとき、今までギャラリーで青城を応援していた女子達がきゃあ！と黄色い声をあげた。


「アララッ、１セット取られちゃったんですか！」
「ーー……及川！」


オイカワ、と呼ばれた男の人。初めて見た人。
だがこの人とここで出会ってしまったことによって私の“ドキドキ☆隠密マネージャー計画”が少しずつ壊れていくことになる。

ぶっぱなしてこーぜ→←来たよ、青城！

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