生きる伝説、烏野に来た。

ガチ勢、本領発揮。 ページ31

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「やばいやばい俺今ちょー汗かいてる……。試合の時と同じくらい心拍数やばいんだけど……！ え、ていうか本当に本当の荒井Aちゃんだよね！？ いや、この綺麗な瞳は荒井Aちゃん以外ありえないからやっぱり本物だ。てことは練習試合の時には俺、本物の荒井Aちゃんに会ってたってことじゃんかっ！？ ハッ！？ もしかして俺の命日今日なのかなッ！？
今だって手とか握っちゃってるし……。思ってたよりも手小さくて俺ドキドキしちゃう……。ゔっ……今日も推しが元気で嬉じいﾞでずっ！ 神様本当に、俺の天使を生み出してくれてありがとう……！」


「待って及川さんがなんか壊れてるんだけど」
「お、及川さん……？ 岩泉さんとか呼んだ方が良いよな……」
「うん。佐藤……じゃないんだっけ？ えー…荒井？ って面倒くさいわ。Aって呼ぶ。まぁとりあえずAを助けたいなら岩泉さん呼ばないとね」
「分かった！ 俺呼んでくるから待ってろよ……って、なんか立ったまま気絶しかけてるじゃねーか！？」


Aの手の感触をしっかりと味わうかのように、にぎにぎと堪能する及川とは裏腹に、手を握られているAは真顔で固まった状態であまりの恐怖に気絶しかけていた。いつもからは想像できない及川の豹変ぶりに国見と金田一も混乱してはいたが、Aが限界だと気づいてからの行動はとても速かった。

まず金田一が近くまで来ているであろう、青城の副主将である岩泉を呼びに行き、残された国見が及川とAの間に割り込む。……はずだったのだが、Aと引き離されるといち早く気がついた及川は強かった。玩具を取り上げられそうになる子供のように「やーめーろー！」と叫びながらAの手を頑なに離さない。

これにはさすがの国見もお手上げ。どうしたものかと頭を抱えた時、金田一が岩泉を連れて戻ってきた。まさに神の救い。

岩泉は他校のマネージャーの手をガッチリと握って離そうとしない及川の姿を見て、目付きをギンッと鋭くさせると「クソ川ァああッ！」と怒声を上げながら及川の後頭部に重い一撃を食らわせた。


「いったァッ！？ 何すんのさ岩ちゃん！」
「それは……こっちのセリフじゃボケェエエッ！！」
「ギャーーーッ！」


力技でAと引き剥がされた及川はそのまま鋭い剣幕の岩泉に引きずられながら会場から出ていった。残された金田一と国見はとりあえずAを応援席に座らせ、自分達もその隣に座り、ハァ……と深いため息をついた。

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