生きる伝説、烏野に来た。

護りの音駒 ページ21

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ドリンクをやっと作り終えて戻ってきた頃には選手達のアップも終わっており、そろそろ試合が始まる頃だった。ギリギリ間に合ったみたい。試合が始まったらスコアも付けないとだしマネージャーも色々大変なんだなー。

そして、試合が始まる。








「……いやまじか」


目の前で起きている自体に、ヒクリと表情が引き攣る。前半、烏野は翔陽と飛雄の速攻や、翔陽を囮にした攻撃、更に新しく加わった東峰さんのパワーとノヤっさんの的確なレシーブで音駒を押していたはずなのに。
ついに、翔陽と飛雄の速攻が捕まってしまった。

守備が固いだけじゃなく、相手への対応が速い。恐らく音駒のセッターであるプリンヘッドさんの策略なんだろうな。結構賢いツッキーでさえあの人に振り回される場面もあったくらいだから。……私なら絶対に対戦したくないなぁ。

もしも中学時代の私が戦ってたら確実にマークされていただろうし、執念深く拾われていただろう。あーやだやだ！ 考えるだけでゾッとする……。ぶっちゃけ決まらないスパイク打つのヤなんだよねっ！！ 気持ちよくないから！


そして今、翔陽はその嫌な状況に遭っている。それなのになぜか翔陽は、とても楽しそうに笑っていた。
あぁ、そっか、翔陽は本物のバレー馬鹿(ばけもの)なんだ。


「…………でもまぁ、“今はまだ”護りの音駒の方が一枚上手かな」


音駒との練習試合でやったのは３セット。だけど烏野は１セットも取る事が出来なかった。
ヘトヘトになって帰ってきた音駒の人達。私や潔子さんも今日は何度もドリンクの作り直しをしてかなり疲れた。夜はよく眠れそう。
猫又監督や武田先生の講評をそれぞれ聞いて、後片付けに入る。ベンチ付近の後片付けをしていると猫又監督が私に話しかけてきた。


「佐藤さん、今日はうちのマネージャーをしてくれてありがとう」
「いえ！ こちらこそ音駒のプレーが間近で見れて楽しかったです」
「そうかそうか、なら良かった。ところで君から見て音駒はどうだった？」
「うーん……とにかく私なら一番公式で試合したくない相手でしたっ！ あ、でも……」
「でも？」
「スパイクを打っても打っても決まらないのは嫌だけど……ボールが中々落ちないから、その分試合を長くできるのは…嬉しいかもです！」


私の言葉を聞いた音駒監督は、急にハッハッハ！と笑い出す。そして周りに聞こえないような小さな声で言った。


「“生きる伝説”さんにそう言って貰えて、ウチも光栄だ！」

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