生きる伝説、烏野に来た。

髪の毛 ページ3

.


黒髪君はそれ以上何も言わずに気まずそうに視線を右往左往させた後、はぁ……と深くため息をついた。そして私のことを全く見ず、ぶっきらぼうに言い放つ。

「……影山飛雄だ」
「ん！ りょーかい、飛雄ね！」
「いきなり呼び捨てかよ」

それが彼の名前だと言うことはすぐに気がついた。案外素直なところもあるじゃん！と思いつつにこやかに彼の名前を呼ぶと、飛雄は名前を言われ慣れていないのか少し挙動不審になる。
飛雄だけ名前を言うのも平等じゃないよねと思い、私も自分の名前を告げようと口を開きかけたそのとき、体育館の入り口からバレー部の先輩と思わしき人達が入ってきた。
自然と私達の意識はそっちにうつる。


そこからの流れは怒涛だった。


翔陽と飛雄が口喧嘩からヒートアップしていき、主将である澤村さんが制止する声も聞かずに勝手に勝負を始めてしまい、そこに偶然来ていた教頭にボールを当ててしまってヅラを吹き飛ばしてしまったり。ギャグ漫画かよ！？とツッコミたくなる勢い。

教頭に連れられて外に行ってしまった澤村さんの後ろ姿を思い出すだけで今にもお腹が捩れそうだ。でもここで大笑いしてしまうと私にまでとばっちりが来そうだからなんとかギリギリで耐える。
そして案の定戻ってきた澤村さんは翔陽と飛雄を体育館から追い出してしまった。


「……で、君はもしかしてマネージャー志望かな？」
「はい、荒井Aです！ バレーの知識も大体のマネ業のやり方も分かります！」
「そっか。頼もしいな。よろしくな、荒井」
「後輩マネとか清水もきっと喜ぶだろうなー！」
「グハッ！ 後輩マネと戯れる潔子さん……美しいっス……」


なんだか翔陽や飛雄に負けず劣らずに個性の強い人もいるけどいい先輩達みたいだから良かった！ 怖い人とかいたらどうしようって思ってたから。ま、監督以上に怖い人なんてなかなかいないんだけどね〜！
ここに監督がいたら確実に外を走らされていただろうけど今はいないから言いたい放題である。


「ん〜？」
「どうした、菅」
「なんか荒井ちゃんの名前、聞き覚えある気がしてさぁ」
「ハハッ、どうせ同名とかだろ」
「えー…そーなんかなぁ」


そんな先輩達の会話が聞こえてきた時少しだけギクッとしてしまう。
中学時代の私は今よりかなり髪の毛が長かった。だけど今はバッサリ切ってボブヘアーになっている。広瀬〇ずみたいな。だから気づきにくいかも。
中学時代の事をあまりバレたくない私はあえて知らないふりをした。

付き合えよ→←眩しい太陽

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す