キスしなきゃ出られない部屋 ―KP― (ページ10)

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髙橋 × 永瀬ページ10

髙橋side

「……なあ海人」

　廉に肩を叩かれて振り向くと、扉に貼ってある紙が目に入った。

「ん？キスしないと開きません……って、なにこれ？」

　そんなラブコメみたいなことあるわけないじゃん！

　まさかと思ってドアノブをひねってみるも、なんとびっくりびくともしなかった。

「ちょ、廉、これマジで開かないっ……！」

「海人それ本気でやってる？」

「やってるよ！廉も試してみてよ」

「開くやろこんなんっ……は、なんやこれ！？」

　当然、廉がやっても開かない。うーん、どうしよう。

「どうする？キスしてみる？」

「は？嫌やわそんなん。なんか出る方法あるやろ、探そ！」

　軽く冗談のつもりで提案してみたら、眉間に薄いしわを寄せながら廉が言った。

　そんなに嫌なの！？冗談とはいえ、ちょっと悲しいんですけど！

「そんな全力で拒否らなくてもいいじゃん！」

「だってしたいわけないやん。それとも海人はイケメンとキスしたいん？」

　にやりと口角を上げながら俺と目を合わせる廉。余裕の微笑みかよ。

「ちげえわ！もうほら、探すよっ」

　なんか廉に踊らされているような気がしたのが悔しくて、廉から目を逸らしながら辺りを見回した。

　でもそれから数分、結局なにも見つからない。

　……もうこうなったら、せめて今度はこっちが手のひらの上で転がしてやろうじゃん！

「ねえ、れーん」

「ん？なんかあった？」

　俺の呼びかけに振り向いた廉にいきなりキスをかましてやった。音もしない、触れて終わるだけの一瞬のキス。

　キスを終えて廉を見ると、相当驚いたのか、目を大きく開きながらぱちぱちさせていた。

「……やっぱり海人、イケメンとキスしたかったんやん」

　目の前のイケメンが照れを誤魔化すように半笑いで言った。ふふん、勝負ありだね。

「廉照れてるー」

「は、海人こそ顔赤いで！」

　指摘されて慌てて頬を触ると、確かに熱かった。

「うるせえばーかっ」

　廉から顔を背けて出口に向かうと、後ろからがははという笑い声が響いてくる。悔しい！

　同い年だけどなんだかんだでお兄ちゃんの廉にはいつも敵わない。

　でもこうやって愚にもつかないことを言い合ってる時間が、俺は結構好きだったりする。

―END―