キスしなきゃ出られない部屋 ―KP― (ページ6)

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髙橋 × 岩橋ページ6

岩橋side

「玄樹くん」

　肩を叩かれて振り向くと、海人が扉に貼ってある紙を指していた。

「キスしないと開きません……？」

　自分で読み上げながらも、意味がわからない。なに言ってんのこれ？

　海人がドアノブを掴み、ガチャガチャとひねる。

「ねえ待って開かない！」

　……嘘でしょ。

　一応俺も試してみたけど、結果は同じだった。

「どうしよう。マジでキスしないと出られないかも」

「え、俺ら二人で？」

「……でも玄樹くん嫌だよね？」

　海人が不安そうに眉を下げながらこちらを見た。

　そんな子犬みたいな顔されたら、どうにかして助けてあげたくなっちゃうじゃん。

「いいよ。しよう」

「本当に？大丈夫？」

　なおも不安げな海人を安心させるために、俺はその目を見つめながら微笑んだ。

「本当だよ。海人ならいいから、そんな不安にならないで」

　そう言いながら頭を撫でてあげると、海人は嬉しそうに目を細めた。可愛いなあ。

「ありがと。……じゃあするね？」

「うん」

　二人の距離が縮まっていき、鼻先が触れ合いそうになったところで俺は目を瞑った。

　直後、唇に柔らかい感触が訪れる。……ん、少しくすぐったい。

　優しいその温もりがゆっくりと離れたところで、二人の目が合った。

「……よし、出よう玄樹くん！」

　海人はその目をすぐに逸らして扉を開けた。

　そのまま俺の手を引きながら部屋を出ようとするけど、そんな後ろ姿から覗く海人の耳は真っ赤。

「耳、真っ赤だよ」

　俺が指摘すると海人は慌てて振り向き、俺と繋いでいない方の手で片耳をふさいだ。よく見たら頬も少し赤い。

「気のせいだから！」

「あははっ、そうかも」

　こんなにも可愛い弟はきっと海人だけだし、これからも俺は甘やかしちゃうんだろう。

―END―