キスしなきゃ出られない部屋 ―KP― (ページ4)

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平野 × 岸ページ4

平野side

「え、岸くんこれ見て」

「ん？ ……うぇ、キスしなきゃ開かない？これガチで！？」

　扉に貼ってある紙を見せると、岸くんが俺の耳元で叫んだ。ちょっとうるさい。

「まあそんなわけないと思うけどっ……」

　そう言いながら扉を開こうとしてみたけど、全然開かない。なんだこれ。

「無理だわ、開かない」

「ガチか、どうすっかー……。あ、紫耀ピッキングできる？」

「できたら犯罪者だわ」

　大真面目な顔でやばいこと訊いてきたよ！大丈夫かこの人。まあ人のこと言えないけど。

　とりあえずほかに出る方法がないか部屋を確認してみたけど、とくになにも見つからなかった。

「どうする？もうキスする？」

　もうこの方法しかないかと思って訊いてみる。

「あ、する？いいよいいよ全然」

　すげえあっさりOKされた。戸惑いゼロ、むしろウェルカム体制整ってる。

「なに、本当はしたかったの？」

「いやいやそういうんじゃないけど！まあでもするんだったら、ほら、ガツンと全力で受けますよ」

　岸くんがグーで自分の胸を叩いた。キスのテンションなんかずれてる。

「ははっ、じゃあ行くよ」

「ばっちこい」

「ばっちこいってなに？汚いって意味だっけ？」

「え、汚いなの！？俺も意味知らないんだけどさ、野球部のときみんながよく言ってたんだよね」

　あ、たぶんこれ、俺らで話しても正解出ないやつだわ。

　ばっちこいは諦めて顔を近づけていくと、岸くんは目を閉じた。……なんか急に乙女入ってるし。

　その唇に自分の唇を重ね、ゆっくりと離れる。

　それからなんとなく無言で見つめ合っていると、岸くんの口がもごもごと動いた。

「おぉ、なんか……すごいね」

「やかましいわ！」

　岸くんが妙にいい表情をするのがなんとなく見てられなくて、それから目を逸らすために扉を開けた。

「いや本当、紫耀キスに自信持っていいよ」

　そんな言われたら普通に恥ずかしいっての！

「もうその話いいから！ほら早く出よう」

　次閉じ込められてもこんな恥ずかしい思いしなくていいように、ピッキングの練習でもしておこう。

　……あ、でもピッキングって内側からするものじゃねえじゃん。今さら気づいた。

―END―