キスしなきゃ出られない部屋 ―KP― (ページ15)

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平野 × 髙橋ページ15

髙橋side

「えっ、ねえねえ紫耀！どうしよう！」

「うるっさいなー、なに！ ……え！？キス！？」

扉に貼ってある紙をみて、紫耀の怒り顔が驚きに色を変えた。

キスしないと開かない扉。なにこれ新しい脱出ゲーム？

「えー、出られないんだけど」

試しにドアノブを回してみたけど、どうやっても開かなかった。

「とっととキスしたらいいだろ」

「そんな即決するものなの！？」

雑誌でよくやるハグとはわけが違うんですけど！

「なに、海人は嫌なの？」

「嫌っていうかさー、だって、キスだよ？」

「だっての理屈がわからない。ハッキリ言えよ」

「……恥ずかしいじゃん」

なんかもうそのセリフを言うのがすでに恥ずかしくて少し俯くと、紫耀はそれを遮るように俺の顎を持ち上げた。

見慣れているはずのその顔がいつもの10倍イケメンに映る。

「ふはっ、顔真っ赤じゃん」

「うるせえ！」

「すぐ終わるから。ほら、目瞑って」

耳元で響いたハスキーボイスにますます顔が熱くなる。

いつもはお兄ちゃんみたいな紫耀が、今だけは一人の男に見えた。

紫耀の顔が近づいてくる。それを直視できなくて言われたとおりに目を瞑ると、唇に柔らかいものが触れた。

「……なんか醤油の味がする」

キスを終えて一番の感想は、まさかの味覚。

「さっきぬれおかき食べた」

「普通、ぬれおかき食べた後にキスする？」

「お前ぬれおかきの良さわかってないだろ？」

部屋を出ながら、なぜかぬれおかきの素晴らしさについて熱弁された。どんだけ好きなの。

おかげでキスの感触や羞恥なんてどこかに消えちゃったけど、唇に残る醤油の味だけはなかなか離れてくれなかった。

―END―