キスしなきゃ出られない部屋 ―KP― (ページ12)

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岸 × 岩橋ページ12

岸side

「ちょ、いわげん！」

「痛い……って、ん？キス？」

俺に連打された肩をさすりながらいわげんが振り向き、扉に貼ってある紙に眉をひそめた。

「そう。やばくね！？」

キスしなきゃ扉が開かないらしい。え、ファンタジーの世界じゃん。

「いたずらかなにかでしょ」

そう言いながらいわげんが扉を開こうとするけど、ガチャガチャという音だけが響く。

「遊んでる？」

「遊んでないよ！これ、本当に開かないんだって！」

代わってドアノブを回してみる。……うわ、ガチで開かない。

いやいや、男岸優太。まだまだ力が足りないだけだ。

「ぐぬっ……！開かねえ！」

「だからそう言ってるじゃん……」

なんかすげえ呆れた目で見られた。まあ、今さらそんなこと気にしないけど。

「仕方ない。キスしよう」

「えー、岸くんとキスとか嫌だー」

「なんでだよ！歯磨きはしてるよ！？」

「いや口臭はどうでもいいけど。……どうでもよくはないか」

「だろ？だから、安心していいから！」

首をかしげながら「なにを？」と笑われた。よし、なんかいい雰囲気。いける！

「じゃあ、ちょっと失礼しまっす」

軽く一礼してからほっぺを両手で包むと、きょとんとした瞳と目が合う。可愛いな。

その瞳を見つめながら、ゆっくりと近づいてキスをした。予想はしていたけど、いわげんの唇、めちゃくちゃぷにぷに。

「いわげんって、炊き立ての餅みたいな唇してるね」

「……つきたてじゃない？」

「あ、それだ」

炊いたらご飯だ。

「てか、まだキスしていいって言ってない！」

「え、でもしてほしそうな顔だったよ」

「幻覚だよ！ほら、開いたから出よう」

ぷんすか怒りながら部屋を出るいわげんはなんだか楽しそう。

本当は嫌がってないってこと、俺はちゃんとわかってるから！

―END―