ifの話ーKPー (ページ49)

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３. ページ49

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それからあっという間に月日は流れ、玄樹が海外ロケに行く日が来た。

「用意もう終わった？忘れ物ない？」

「パスポート、財布、スマホ、着替え……、うん、ちゃんと入れた」

玄関先で荷物の確認を終えた玄樹が俺を見てくる。

嬉しそうなのに、どこか悲しそうな目。

「……ちょっと不安？」

「まあね。1人で10日間もロケなんて、初めてだもん。……それに、神宮寺にもしばらく会えない」

……玄樹も思ってたんだ。

俯くその顔もかわいいけど、もっと前向きにロケに臨んでほしいな。

そのために俺にできることは、マイナスになりかけた玄樹の心を癒してあげることだけ。

「え、？」

頭をぽんぽんと軽く叩くと、玄樹が少し驚いたような顔で俺を見上げた。

「大丈夫だよ。玄樹ならきっとできる。寂しくなったら、いつでも連絡して？」

「……神宮寺……、」

「……でも無理しないでね。1人で抱え込まなくていいから」

俺もだけど、それ以外にも、玄樹の味方はたくさんいる。

だから頑張りすぎず、自分のペースでやっていいと思うんだ。誰も責めないし、そんなことする奴がいるなら俺が許さない。

俺のそんな想いが伝わったのか、玄樹はこくんと頷いた。

「……うん。ありがと、そろそろ行くね！」

凛々しい顔。いつもはかわいいけど、今はかっこいい。

「うん。いってらっしゃい」

ドアを開けながら俺に笑顔を向ける玄樹。

あー……、やっぱりかわいい！

「玄樹！」

「ん？」

「愛してるよ」

なんかどうしても言いたくなった。

「ふふ、俺も愛してる！いってきます！」

その言葉を最後にドアは閉じられ、家の中は途端に静かになった。

でも10日後には、きっとまた賑やかになる。

そのときまで俺は、この場所で玄樹を待っているんだ。

―END―

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