ifの話ーKPー (ページ36)

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３. ページ36

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「先にロケバスに入っててください」

外で喋っているとスタッフさんに促され、俺らは一足早く車内に乗り込んだ。

そのまま奥の広いスペースに2人で並んで座った直後、

「玄樹くん！」

「ん？」

「ここ！」

海人が自分の膝をぽんぽんと叩く。

……えっと、これはもしかして？

「行きは俺が寝ちゃったから。帰りは玄樹くんが俺の膝で寝ていいよ？」

やっぱり、そういうこと。

俺を横目で覗く海人はまた、男らしい顔になっている。

甘えん坊なのか、男なのか。この子は本当に忙しい。まあどっちもなんだけどね。

「じゃあ、ちょっとだけ借りようかな？」

眠くはなかったけど、せっかく言ってくれているので、海人の膝の上で横になってみる。

「ふふ、玄樹くんかわいい～」

今度は俺が頭を撫でられた。

そのままその手に身をゆだねていると、海人がぽつりと呟く。

「俺ね、ロケ1人だと結構緊張しちゃうの。でも今日は隣に玄樹くんがいてくれたから、なんか安心しちゃった」

……安心、だなんて。それはこっちのセリフ！

「俺も、海人がいてくれてよかったよ」

俺の言葉に海人は「ほんとに？」と頬を緩ませる。またかわいいに戻っているなあ。

そう。こんなにかわいいけれど、頼りになる一面もあるのも事実。

いつも現場の空気を読んで引っ張ってくれる。

「あれ、もう起きちゃうの？」

「うん、ありがと」

そんな海人だから、こういうときはやっぱり俺が甘やかしてあげたい。

起き上がって座り直し、目の前の大きな瞳を見つめながら腕を広げる。

「海人。おいで？」

「……へへ、」

素直に抱きついてきた。

かっこいいところもたくさんあるけど、まだまだ甘えん坊な末っ子。そんなところも俺は好きだよ。

スタッフさんが乗車してくるまでの約1，2分間、俺らはそうやってぎゅっとくっついていた。

―END―

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