ifの話ーKPー (ページ14)

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…

「フローラルだ！」

「えっなに！？」

「あ、ごめん。玄樹のにおい。さっきめちゃくちゃきた」

「え、そう、フローラル。よくわかったね」

目をぱちぱちさせる玄樹の口角は少し上がっている。

気づかれて嬉しいのかな。

「俺結構においフェチなんだよね」

「紫耀、前にもそんなこと言ってたよね」

俺を軽く指差す玄樹の手首から、さっき感じた以上のにおいが香ってくる。手首はとくにしっかり香らせてるっぽい。

あー、なんか、この感じめちゃくちゃいい。

「俺これすげえ好きだわ」

玄樹を見つめてそう言った。でも真顔で「ふーん」と頷かれる。

あれ、信じてない？マジなのに！

「いや、マジで好きだから！フローラルだからとかじゃなくて、そもそも好きな奴がつけてるってだけで――」

「わかったから！もうっ」

力説しようとしたら、笑いながら顔を逸らされた。

……さっきの薄い反応は照れ隠しだった？

そのかわいさに癒されていたとき。隣からワイワイ騒ぐ声が聞こえてきて、我に返った。

「あ、忘れてた。玄樹次」

ボウリングに来てたんだったわ。話逸れまくってた。

「あー、そうだった」

そう言いながらも玄樹は動かない。

どうした？と聞こうとした瞬間、玄樹がぽそっと呟いた。

「……好きとかそういうのは、2人きりのときに言ってよ」

「今も2人きりじゃん」

「周りに、人いるし」

玄樹が隣でボウリングをしているグループをチラッと見る。

なんだそれ。誰にも聞かれたくない的な？

……かわいすぎるな！

「ははっ、わかったわかった、2人きりのときな！」

「ふふ、うん。……次、投げるから見てて！」

何事もなかったかのようにボールを取りに行く玄樹。

でも、その後ろ姿から覗く耳は少し赤くて。

あざといくらいに全部がかわいい、そんなところがますます好きだと思った。

…